2019年6月24日月曜日

ファイナンシャルプランナーをお金のアドバイザーにする時の注意点

ファイナンシャルプランナー相談


金融庁ワーキング・グループの報告書は2,000万円不足、財務大臣の報告書受け取り拒否ばかりが報道されて、本質の部分は見落とされていました。

この報告書には、「米国では証券会社などの金融サービス提供者から独立して、顧客に総合的にアドバイスする者が多数いる」、「日本にも存在するが数は少なく認知度も低い」という記載があります。

この報告書にある、数は少ないけど存在する認知度の低いアドバイザーには、金融機関に属さないファイナンシャルプランナーも含まれると思います。

この記事では、ファイナンシャルプランナーをお金のアドバイザーにする時の注意点を説明したいと思います。



ー目次ー

1.FP発祥の地アメリカでは「ファイナンシャルプランナーは富裕層のための職業」
2.これからの時代により必要になるアドバイザーとしてのファイナンシャルプランナー
①長生きにはお金が必要
②預貯金以外は何もしていない日本人
③金融機関に相談すると損をしてしまう現状
④自己管理は難しい
3.ファイナンシャルプランナーを選ぶポイント
①専門分野の把握
②感覚的に相性やスタンスが合うか?



1.FP発祥の地アメリカでは「ファイナンシャルプランナーは富裕層のための職業」

アメリカと日本のファイナンシャルプランナー比較


ファイナンシャルプランナーの本場アメリカでは、ファイナンシャルプランナーには公認会計士や弁護士と同様の高い社会的地位が与えられています。

アメリカのファイナンシャルプランナーは資産管理を主な業務としている人が多く、ファイナンシャルプランナーは富裕層のための職業です。

背景には日本人とアメリカ人の資産に関する考え方や行動の違いがあります。

日本では、自分の資産管理を他人に任せるという文化はなく、投資に対して悪いイメージがあるため資産は預貯金に集まります。

資産管理を主な業務とするアメリカのファイナンシャルプランナーに対して、日本のファイナンシャルプランナーは保険や金融商品の販売が主な業務のため、資産形成や相談が主ではなく、商品を売るための手段が相談になっています。



2.これからの時代により必要になるアドバイザーとしてのファイナンシャルプランナー




①長生きにはお金が必要


長生きとお金


金融庁の報告書の影響で「老後に2,000万円必要」というワードが話題になりました。

政府の調査だけでなく、平成28年に生命保険文化センターが行った意識調査でも、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は、月額で平均22.0万円となっています。

また、旅行や趣味など、ゆとりある老後生活を送るための費用として、最低日常生活費以外に必要と考える金額は平均12.8万円となっています。

合計すると34.8万円×リタイア後の寿命がゆとりある老後の必要額ということになります。

これは単純に平均支出だけを掛け算した算数の話で、健康に生きられる年数は何年?とか、個人の生活水準、年金収入や保有資産などを考慮すれば、誰にでも当てはまるものではありませんが、長く生きるほどお金が必要になるということは間違いありません。


②預貯金以外は何もしていない日本人


貯蓄


5年に一度実施されている内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、50代までに行った老後の経済生活の備えについて、「特に何もしていない」と回答する高齢者の割合は、日本が約4割でもっとも多く、貯蓄や資産について、老後の備えとして十分と考える高齢者の割合(「十分」と「まあ十分」の計)は、スウェーデン72.7%、アメリカ68.8%、ドイツ66.3%となっており、日本は最も少ない37.4%となっています。


参照 平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果

日本には3つの特徴があります。
・老後の備えが足りないと考えている人がもっとも多い
・老後資金準備を何もしてこなかったと回答する人がもっとも多い
・預貯金以外の手段で準備している人が少ない

老後のお金に不安があるけれど、預貯金以外は何もしていない人が多いというのが特徴です。


③金融機関に相談すると損をしてしまう現状


金融機関にだまされる


昨年の夏ごろに「銀行で投資信託を購入した人の約半数が損失を出している」という記事がでました。

アベノミクスで投資環境は良く、長期で投信を保有すれば利益が出やすい環境にあった中で、約半数の人が損失を抱えているという状況です。

含み益のある投信を解約して、別の投信に購入させることで購入時手数料を稼ぐ「回転売買」が行われていた可能性があります。

保険でも同様の案件がありました。
かんぽ生命保険が、顧客の不利益となるような保険の乗り換え契約が複数確認されているそうで、背景は販売員が手数料を得るための件数稼ぎと報道されています。

自分の手数料収入・契約件数のために、顧客が不利益になるアドバイスをしてしまう。
手数料が収入源の人に相談すると起きてしまう最悪のケースです。


④自己管理は難しい


自己管理


健康や体形維持のためにスポーツジムに通っている人がいると思います。
スポーツジムではボディビルなど競技のためのトレーニングをしている人、トレーニングが趣味の人、健康や体形維持のための人 おおまかに3種類の人がいます。

競技や趣味で鍛えている人は家でできるトレーニングやトレーニング器具では本格的なトレーニングができないからジムに来るのだと思います。
本格的なトレーニングをトレーナーに教えてもらいたい人もいるかもしれません。

健康や体型維持が目的の人は本格的なトレーニングをする必要はありません。
自宅や家の近所の公園などでトレーニングをすれば済む程度でも健康や体型維持のためなら十分です。
それでもジムにお金を払ってまでトレーニングにきます。

一般的に、トレーニングはつらくて疲れるものです。
家にいればテレビを見たり、ゲームをしたり、いろいろな誘惑があります。
健康や体形維持のためという目的の人が、自宅でトレーニングを続けるのは、よほど意思が強くないと難しいのだと思います。

ジムに行く人は、トレーニングをする環境に行くことで、トレーニングをする意欲を湧かせている面があるのです。
よほどの目的があるか楽しくない限り、自己管理をするのは難しいのです。

節約やお金の管理も同じなのではないでしょうか?

誰かにチェックされたり、方法や目標を指示された方が続けやすいという側面があります。

自己管理はどうしても甘えが出てしまうので、監視役という意味でファイナンシャルプランナーに家計のチェックを頼んだり、投資助言や支出のスリム化などのトレーナー的役割を担うこともできます。



3.ファイナンシャルプランナーを選ぶポイント



ファイナンシャルプランナーを選ぶポイント

 ①何が専門のファイナンシャルプランナーなのか?

病院


ファイナンシャルプランナーにも、病院と同じで自分の専門分野があります。
内科、外科、整形外科などの専門があるのと同じです。

足を捻ったときに耳鼻科に行く人はいないと思います。
耳鼻科は捻挫が専門分野ではないと分かっているからです。

保険が専門のファイナンシャルプランナーに不動産の相談をしても、教科書に書いてある以上のことは教えてもらえないですし、不動産が専門のファイナンシャルプランナーは、個別の保険商品の詳しい説明はできないでしょう。

病院と違って、ファイナンシャルプランナーで専門分野を掲げている人は少数です。
たくさん顧客がほしいので、私は何でも知っているくらいのホームページを作っている人もいます。

ファイナンシャルプランナーのカバーする範囲はとても広いので、全ての専門家であることはありえません。

得意な分野、不得意な分野が必ずあります。
自分が何を依頼したいのか再確認して、その分野を専門としているファイナンシャルプランナーを選ぶ必要があります。


②感覚的に相性やスタンスが合うか?


考え方が合う


ファイナンシャルプランナーは、将来のライフイベントのためにお金についてのアドバイスをします。

将来のお金の計画をするので、ファイナンシャルプランナー自身の将来見通しへの考え方によって提案内容が違ってきます。

世の中には、このままの経済政策ではハイパーインフレになるとか、1$=50円になると考えている人もいるかもしれません。

デフレがずっと続くので、投資はせずにひたすら節約して現金を貯めておけというファイナンシャルプランナーもいれば、住宅ローンの金利が6%になる試算をするファイナンシャルプランナーもいます。

顧客の考える将来の見通しとファイナンシャルプランナーの考える将来の見通しに大まかな方向性の合致がないと、どんな提案も受け入れがたいでしょう。

二人三脚で、自分のお金の管理を依頼するのですから、ある程度のスタンスの一致はあった方がいいでしょう。

上記の2点に気を付けて相談相手を探してください。

2019年6月14日金曜日

「老後2000万円不足問題」 現役世代の老後資金対策


お金


老後の生活に2000万円必要と報道された金融庁の報告書で年金や老後の生活について、不安を感じる人が増えています。

この記事では、日本の年金制度の説明と現役世代ができる老後資金対策について説明します。


ー目次ー


1.どうして老後の生活に2000万必要?
 ー2,000万円不足はあくまでモデルケース
2.「年金100年安心プラン」とは?
 ー年金で100年生きられるわけではない
3.日本の年金制度は世代間扶養
 ー年金は生きている限り払われる長生き保険
4.年金はどうして足りない?
 ー原因は少子高齢化と昔の保険料の安さ
5.積立金は今のところ増えている
 ー15兆損失と報道のGPIFの運用成果
6.政治に年金の問題は期待できない
 ー誰がやっても基本的には同じ
7.年金は長生き保険と考えてできることから始める
 ーまずはねんきん定期便で現状の確認を



1.どうして老後の生活に2000万必要?


■2000万円不足するモデルケース (高齢無職世帯の平均)


社会保障給付  191,880円
勤務先収入       4,232円
事業収入        4,045円
その他         9,041円

収入計     209,198円

食費      64,444円
住居      13,656円
光熱費     19,267円
家具・家事用品   9,405円
被服費       6,497円
保険・医療   15,512円
交通・通信   27,576円
教育         15円
教養娯楽費       25,077円
その他の消費    54,028円
税金・社会保険 28,240円
       
支出計           263,718円

209,198円—263,718円=-53,920円

平均値なので、こんなに支出しない人もたくさんいます。
賃貸住宅の人は住居費がもっと高い可能性が高いです。

収入面でも年金がこれより少ない人もいます。
生活水準はひとそれぞれなので、2,000万円不足はあくまでこのモデルで試算した場合です。



2.「年金100年安心プラン」とは?


①保険料は18.3%を上限に2017年まで段階的に引き上げる。
②もらえる年金はモデル世帯で現役世代の手取り収入の50%を確保。

保険料・積立金・国庫負担で財源を固定し、受給者の数などに応じて給付額を調整する方式が導入されました。

「これから100年間、現役時代の収入に対する年金額の割合を、最低50%保証するから安心してね」というのが年金100年安心プランの内容です。

100年安心は当時の公明党が言っていた名称ですが、100年安心プランというのは、制度が100年維持されるということで、個人が100年生きても年金で生活できるということではありません。




3.日本の年金制度は世代間扶養


年金問題

日本の年金制度は、生きている限り生涯にわたって支給される終身年金です。
生きていることが条件の保険ですから、死んでしまうと一時金が支給されておしまいです。

高齢者の受給分を現役世代の保険料などによって支える賦課方式の世代間扶養です。
働く世代が保険料を払い、そのまま支給に当てます。

その年に支払われた保険料をその年の給付に充てるため、お金の価値は同じです。
そのため、現在の賦課方式はインフレに強いという特徴があります。




4.年金はどうして足りない?


出生率は1980年頃から低下しているので、このころから将来的に人口が減ることは予想できたはずだったのですが、2004年まで大きな改正は行われませんでした。

2004年の改正で出てきたのが、100年安心プランです。
少子高齢化で現役世代が減少するため、給付を調整して制度を維持することが目的でした。

年金が足りなくなった根本的な理由は、少子高齢化と昔の世代の保険料が安かったことです。

1990年以降の物価は、ほぼ横ばいです。
国民年金保険料 1990年の8,400円、2019年16,410円
厚生年金保険料率 1990年 14.3%(男性) 2019年 18.3%

ほとんど物価が変わっていない1990年でも年金保険料はこんなに安いのです。
さらに遡れば1980年の国民年金保険料は3,770円です。

年金の給付負担倍率を見れば、物価上昇や家族構成の変化を考慮しても、昔の年金保険料が安いのが一目瞭然です。

世代ごとの年金給付負担倍率


年金保険料で払われる額と積立られている額は決まっているので、昔の制度の不備をカバーするのは現代から将来にかけて調整するしかありません。

年休受給世代に「昔の保険料が安かったから、年金半分ね」とは言えないからです。

2004年に改正が行われたのは、年金の制度維持、世代間格差の解消という背景があります。

2016年に年金カット法案と報道された改正で「賃金・物価スライド」の見直し・「マクロ経済スライド」の強化の2点の改正が行われています。



5.積立金は今のところ増えている


現在の年金支給は現役世代の払った保険料と国庫負担で大半がまかなわれています。
積立金運用益からの支払いはごくわずかです。

積立金は将来世代の給付のために運用されています。
直近で15兆円の損失があったため、運用に失敗していると報道されていましたが、累積収益額は56.7兆円となっています。GPIFの運用は現時点では成功しています。

しかし、市場は上下を繰り返すので長期的には不透明です。



6.政治に年金の問題は期待できない


統計に基づいた報告書をなかったことにしようとする政府、政権の座についていた時期には問題にすらしなかったのに2000万円足りないという部分だけを感情的に取り上げて批判し、政争に利用する野党、政治に老後の生活を期待するのは無理でしょう。

そもそも、年金は貯まっているお金とこれから集めるお金はある程度決まっています。
急に少子高齢化の傾向がなくなることはありません。
払う分を減らすか、集める分を増やすか、どちらかしか調整する方法はありません。

誰が舵取りをしても、年金給付は劇的に変わることはないのです



7.年金は長生き保険と考えてできることから始める


お金積立



モデル世帯の2000万円不足に憤りや不安を感じるよりも、できることから対策を始めましょう。
まずは年金ネット、ねんきん定期便で現状の把握をします。
自分が将来もらえる見込みの年金額が確認できますから、具体的なイメージができます。

確認したうえで足りないと思われる金額を試算して、対策を始めましょう。

個人年金の運用先として制度が拡充されたiDeCoは掛金が所得控除されます。
年収400万円の会社員が月に5,000円掛金を拠出した場合は年間で約9,000円※の節税効果があります。
※年間の掛金に対し、年収などから計算された課税所得をもとに所得税率と住民税率をかけた額

口座管理手数料がかかる、60歳まで取り崩せないというリスクはありますが、元本保証の運用商品もあります。

運用益が非課税のため、預金よりは効率がよく、節税効果も利回りと考えれば、利率の低い元本保証の投資先でも立派な投資になります。

もっとリスクをとれる人はiDeCoで元本保証でなく投資信託の積立をしてもいいですし、違う投資をしてもいいと思います。

株式、投資信託の積立、不動産、ソーシャルレンディング、投資先はいくらでもあります。

投資対象の最低限の知識を身に着けて投資をしましょう。

将来どうなるのか分からないから不安になります。
現状を確認して、将来の人生設計を立てる。

2000万円足りないとか、破綻するとか、くだらない報道に踊らされず、まずは自分の将来の資金について確認から始めましょう。

自分で計画が立てられない、現状の把握ができないなら、専門家に相談するということから始めてはいかがでしょうか。

2019年5月27日月曜日

資産形成のすすめ「人生100年時代の資産形成と資産管理」報告書案の中身

ライフプラン


金融庁が報告書案「高齢社会における資産形成・管理」を金融審議会で示しました。
新聞等では「政府が年金など公助の限界を認め、国民の「自助」を呼びかける内容」と報道されています。

この記事の影響で「退職後の生活に困らないようにするための年金では無いのか?」「自助を求めるなら年金なんて払いたくない」などの反応があるようですが、報告書案を読んでみると、少し違う見方ができます。


この記事では「高齢社会における資産形成・管理」報告書案について説明します。


—目次ー


1.日本の年金制度
 -国民年金と厚生年金

2.海外の年金制度

 ①:アメリカの年金制度
 ②:ドイツの年金制度
 ③:スウェーデンの年金制度

3.日本に限らず年金だけで生活できる国は少ない

 -OECD調査の所得代替率

4.資産形成の必要性
 ①現役期の資産形成
 ②リタイヤ期前後の資産形成
 ③高齢期の資産形成 

5.金融リテラシーの向上

 -投資教育の必要性

6.アドバイザーの充実


7.豊かな老後の生活には自助努力が必要
 ー老後の生活を豊かにするために私的な資産形成を




1.日本の年金制度


まずは、前提として日本の年金制度について、簡単に説明します。
日本の年金制度は、20歳以上の全国民が公的年金制度でカバーされる国民皆年金です。
自営業者などは国民年金に,被用者とその配偶者は厚生年金に加入する2階建の設計です。

国民年金保険料は16,410円(令和元年度)、厚生年金保険料率は18.3%(労使折半)です。

国民年金の受給開始年齢は、原則65歳からです。
厚生年金は、支給年齢が段階的に引き上げられ、昭和3642日以降生まれの男性、昭和4142日以降生まれの女性は全額、65歳からの支給となっています。

加入月数に応じて決まる基礎年金の定額給付で厚生年金加入者は基礎年金にプラスして報酬比例部分が支給されます。

支給額については、毎年誕生月に届く、「ねんきん定期便」で確認できます。
50歳未満の人は現時点までに支払った保険料に基づいた年金額(今後の納付で支給額が増える)が、50歳以上の人には現在の状態のまま60歳まで納付を続け、60歳で納付をやめた場合を想定した年金額が記載されています。

※詳細は 「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド を参照してください。



2.海外の年金制度


年金の支給年齢の引き上げや支給額が減っているのは日本に限ったことではありません。
参考までに海外の年金制度も確認してみます。

①アメリカの年金制度


アメリカの年金制度は1階建てで,被用者であるか自営業者であるかを問わず,米国に居住している就労者を対象として保険料を徴収します。

保険料率は12.4%(労使折半)で40 四半期以上の加入期間を持つ 66 歳以上の人が受給できる報酬比例年金です。

②ドイツの年金制度


社会保険方式の所得比例年金制度が職種ごとに分立しています。
被用者は18.7%(労使折半)、特定の職業に従事する自営業者は18.7%です。

労働者年金でスタートしていて、特定の業種以外の自営業者には公的な年金制度がありません。
支給年齢は65歳から67歳へ段階的に引き上げ予定です。


③スウェーデンの年金制度


・賦課方式で運営される所得比例年金と,拠出建て年金である積立年金からなる,保険料の拠出実績と給付がリンクする2階建て構造を採用しています。

保険料率は18.5%(事業主10.21%,被保険者7%)です。
61歳から受給が可能ですが、段階的に65歳に引き上げられる予定です。



3.日本に限らず年金だけで生活できる国は少ない


OECDの調べた年金の所得代替率のデータがあります。
所得代替率というのは、年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合か示すものです。

oecd所得代替率表
出典:厚生労働省 諸外国の年金制度について

日本の所得代替率は約34%で諸外国と比較して低い水準となっています。
一方で公的年金だけで見ると決して低い訳ではありません。

諸外国は私的年金(準強制のものを含む)が所得代替率を上げていることがデータで分かります。

日本ではiDeCoNISAの制度が拡充されつつあり、私的年金での資産形成を進めることができるようになってきています。



4.資産形成の必要性

資産形成イメージ、時計とお金


報告書案では、長寿化に伴い資産寿命を延ばすことが必要だとしています。
資産寿命を延ばすために「現役で働く期間を延ばす」、「生活費の節約」、「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」という点が挙げられ、ライフステージ別に資産形成の要点が書かれています。

①現役期の資産形成


長寿化に対応し、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期。

早い時期からの資産形成の有効性を認識し、いざというときに備えた資金を確保しつつ、少額からでも長期・積立・分散投資による資産形成を行う。

②リタイヤ期前後の資産形成


金融資産の目減りの抑制や計画的な資産の取崩しに向けて行動する時期。
退職金がある場合、早期の情報収集と使途の検討。
必要に応じ、収支の改善策を実行し、中長期的な資産運用の継続とその後の計画的な取崩しを実行する。

③高齢期の資産形成


資産の計画的な取崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期。
心身の衰えを見据えてマネープランを見直す。
金融面の本人意思を明確にしておき、自ら行動できなくなった時に備えておく。



5.金融リテラシーの向上


2016年の金融リテラシー調査によると、日本人の金融知識・判断力の問題についての回答の正誤がアメリカ・ドイツ・イギリスと比較して710%劣るということが分かっています。

金融商品や金融サービス、税制、教育制度等の面で事情が異なるため、一概に日本人の金融リテラシーが低いと言えるかは分かりませんが、金融庁は金融リテラシーの向上に重点を置いています。

関係省庁・企業・機関・地方公共団体等だけでなく、企業の従業員に対する投資教育の義務などについても言及しています。



6.アドバイザーの充実


ライフスタイルが多様化し、金融商品・サービスも多様化しています。
金融庁は、総合的なアドバイスを提供できるアドバイスができるアドバイザーの重要性に言及しています。

アメリカでは証券会社などの金融サービス提供者から独立して、顧客に総合的にアドバイスするアドバイザーがいますが、日本には少なく、認知度も低い現状を指摘しています。

ファイナンシャルプランナーもアドバイザーとなりえる存在ですが、保険・金融などの商品販売側に在籍している人が多く、顧客のためのアドバイザーとなれるかは、その人の倫理観に依存しているのが現状です。

顧客側もアドバイザーに対して報酬を払う習慣がないため、中立なアドバイザーが活動しづらいという現実もあり、改善が必要です。



7.豊かな老後の生活には自助努力が必要


老後イメージ


現状では、平均的な無職高齢世帯でも月に20万円程度の収入があり、ぜいたくをしなければ生活に困ることはないかもしれません。

しかし、少子高齢化、長寿化が原因で年金支給が調整されていくことは間違いありません。

新聞報道では、政府が自助を呼びかけたことだけが強調されてしまいました。
今までの日本では、リタイア後は年金で生活するモデルが当たり前だったので、自助を呼びかけられると納得のいかない部分もあると思います。

いくら批判をしても、現実は少子高齢化・長寿化で年金が減るのは避けられません。
今回の報告書案を金融機関に向けた資産形成への関わり方と国民に向けた「老後の生活を豊かにするために私的な資産形成のすすめ」だと読むこともできるのです。

それほど長い内容ではないので、報告書案はぜひ読んでみてください。

健康と同様にお金も重要です。
年金は老後生活資金の柱ではありますが、長生き保険というような感覚で考えて、必要に応じて信頼できるアドバイザーを見つけて相談しながら、自分の資産状況を見える化し、資産形成を進める必要があるのではないでしょうか。



2019年5月17日金曜日

投資用不動産向け融資厳格化 改めて不動産投資をする意味を考える

不動産投資イメージ、お金と家


スルガ銀行の不正融資問題が発覚以降、投資用不動産向け融資は審査が厳格化されています。

一物件一法人や2重契約によるオーバーローン、金融資産エビデンスの偽造などのイリーガルな手法は行えなくなり、急激に規模拡大して専業大家になることは難しくなりました。

参照
犯罪の可能性も 違法なオーバーローンに注意
複数法人利用の「一物件一法人スキーム」はグレーゾーン?


不動産投資をやる目的が専業大家になってセミリタイアという人は目標達成に長い時間が必要になり、現実的ではなくなりました。

今まで多くの不動産投資セミナーや投資家のブログなどではセミリタイア、規模拡大以外の面についての不動産投資のメリットについて、あまり言及されていませんでした。

この記事では、この融資情勢下で不動産投資を行うメリットについて紹介します。



ー目次ー


1.不動産投資で資産形成
 — 家賃収入や売却時の売却益など、資産形成を進めるための一つの手段

2.年金不安へのリスクヘッジとして
 — 老後の生活の私的年金

3.終身雇用の終焉 セーフティネットとしての不動産投資
 — トヨタ自動車「終身雇用の終焉」

4.副業・兼業としての不動産投資
 ー 外部委託しやすい不動産賃貸業

5.まとめ:不動産投資は正常な状態に戻りつつある。
 ー 規模拡大だけが不動産投資のゴールではない



1.不動産投資で資産形成



日本人は長生きになり老後の生活資金が重要になっています。
国はiDeCoやNISAなどの制度を作り、税制面での優遇措置を設け、国民の資産形成を促しています。

iDeCoは平成29年に制度を改正してより多くの人が加入できるようになりました。
金融庁・厚労省など役所の垣根を越えて制度を作り、税制面での優遇を行うのは、今までと同じレベルでは国が定年退職後のお金の面倒を見られなくなる可能性があるからかもしれません。

豊かな老後のために、これからは自分で資産の準備をしておく必要があるのです。
不動産投資は不動産の家賃収入や売却時の売却益など、資産形成を進めるための一つの手段になります。


参照:貯蓄から資産形成へ なぜ資産形成が必要なのか

2.年金不安へのリスクヘッジとして



メディアで定期的に年金制度への不安があおられているため、年金に不安がある人は多いようですが、日本の年金制度はよくできていて年金がもらえない可能性はありません。

もらえないことはありませんが、年金制度を持続していくためにいろいろな改正がされています。

昔は60才だった年金支給開始年齢は繰り上げられ、現在は65才となっています。
今後、さらに支給開始年齢は引き上げられる可能性があります。

支給開始年齢まで仕事を続けることができれば問題ないかもしれませんが、60才定年で定年後の仕事が見つけられない人は貯蓄を取り崩して生活しなければならなくなります。

もらえないことはないとは言っても、公的年金で受け取れる年金額はあくまでも最低限で、法改正等で減る可能性があるものと考えて、豊かな老後の生活のためには私的年金として資産形成を進める必要があります。


3.終身雇用の終焉 セーフティネットとしての不動産投資



トヨタ自動車の豊田章男社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言して話題になりました。

日本を代表する企業のトップが発言したことで終身雇用から労働人材の流動化に進むのかもしれません。

流動化した人材が適正に評価されて転職する流れが進むとしても、転職活動期間など給与収入のなくなる期間のセーフティネットとして、ある程度安定した家賃収入がある不動産賃貸業は選択肢の一つとなるかもしれません。


4.副業・兼業としての不動産投資



いまだに副業禁止の企業は多く、リクルートキャリアの調査(2018年)によると、兼業・副業を禁止している企業は約7割となっています。

しかし、政府は「働き方改革」の一環としてテレワーク・副業・兼業を推進しています。
厚労省では「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表していて、今後は副業としての不動産賃貸業(不動産投資)という選択が増えるかもしれません。

不動産賃貸業は外部に委託できる業務が多く、副業として行いやすい面があります。
しかし、トラブルになった場合や緊急時の意思決定が必要な場合など、本業との兼ね合いが難しい部分もあり本業の勤務先の理解やある程度の融通のようなものは必要となります。


5.まとめ:不動産投資は正常な状態に戻りつつある。


建物と資産形成のイメージ



もともと、急激な規模拡大はイリーガルな手法で行われることが多く、常に金融機関に不正がばれた場合の一括返済や違約のペナルティによる金利上昇などのリスクを背負った状態での不動産賃貸業を行わなければならない極めてリスクの高い手法でした。

融資が厳しくなったと言われますが、正常な状態に戻りつつあるとも言えます。
正攻法で不動産投資を行っても、資産形成に有効であることは間違いありませんし、規模拡大だけが不動産投資のゴールではありません。

これからは専業大家を目指すには地道に長い年月をかけて、経営者としての実力を評価されるようになって物件を増やす方法しか道はありません。

不動産投資をする意味はレバレッジをかけた規模拡大ではなく、もともとの不動産投資の恩恵を得ることに変わっていくのだろうと思います。



2019年5月9日木曜日

2019年5月 住宅ローン金利 フラット35は0.02%上昇

住宅ローンイメージ


2019年5月の住宅ローンの金利が公表されています。

固定金利は概ね横ばい状態、変動金利については、変わらず横ばいとなりました。
フラット35の金利は0.02%上昇しました。

日銀は政策金利のフォワードガイダンスを明確化するとともに、強力な金融緩和の継続を決定しました。

フォワードガイダンスについて、「少なくとも 2020 年春頃まで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」と変更しています。

住宅ローンについては、少なくとも1年程度は低金利の状態が続くことになりそうです。




2019年5月の住宅ローン金利一覧
変動金利3年固定10年固定20年固定
三菱UFJ銀行0.5250.3900.690
みずほ銀行0.5250.5500.6501.150
三井住友銀行0.5250.8001.1001.690
りそな銀行0.4700.9951.2452.295
三井住友信託銀行0.4450.5000.6501.100
横浜銀行0.4700.5450.7451.400
ソニー銀行0.4570.6500.8901.307
新生銀行0.6000.7501.0001.450
東京スター銀行0.4500.8500.950
イオン銀行0.5200.4300.740
住信SBIネット銀行0.4471.2501.1102.520
楽天銀行0.5270.8211.020
じぶん銀行0.4571.4201.5401.800
※金利は毎月見直されます。申込時ではなく、借入時の金利が適用されます。
※上記金利は金利引き下げ後の金利です。金利の引下げ幅は、審査結果等により決定します。
フラット35
15~20年21~35年※借入90%以下 機構団信付
ARUHI1.2301.290
住信SBIネット銀行1.2301.290
楽天銀行1.2301.290
イオン銀行1.2301.290

2019年4月25日木曜日

不動産向け融資、バブル期以来の過熱サイン

日銀


4月17日に日本銀行が公表した金融システムレポートで、不動産業向け貸し出しが1980年代後半のバブル期並みの過熱サインを示しました。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr190417.htm/

■金融システムレポートとは?
日銀が金融システム全体の状況についての分析・評価を行うレポートで、原則年2回公表しています。
金融市場からみたリスクの所在、金融経済活動において行き過ぎた動きがないか、金融機関の財務基盤の充実度などを点検、検証し、金融機関の課題を示しています。


この記事では、投資用不動産向け融資にも影響のある金融システムレポートの内容を確認してみます。


ー目次ー


1.不動産業向け貸し出し、バブル期との比較
 ①バブル期
 ②現在
2.不動産業向け貸出の増加、日銀が指摘する問題点
3.不動産融資で日銀が金融機関に求めるリスク管理
4.過去の金融システムレポートの不動産関連の記載
 ①2015年4月
 ②2015年10月
 ③2016年3月 金融システムレポート別冊シリーズ
 ④2016年10月
 ⑤2017年4月
 ⑥2017年10月
 ⑦2018年4月
 ⑧2018年10月
5.2019年4月レポートの投資用不動産向け融資への影響


1.不動産業向け貸し出し、バブル期との比較



今回のレポートでは、不動産業向け貸し出しの対GDP比率だけが、バブル期並みの過熱水準を示す赤色となりました。

現在は不動産賃貸業向けの融資は厳しくなっており、新規実行額が減少しているなかでも、残高が伸びを続けているのは、賃料収入から所要経費を差し引いたキャッシュフローによって元利返済していくことを前提とする長期貸出であることが要因のようです。

日銀は「近年の不動産業向け貸出のバブル期との違いは、大型の不動産取引業向けよりも、不動産賃貸業向けの貸出が増加していることである。」と指摘しています。

①バブル期


借手は不動産業のほか建設、ノンバンクを含む⼤⼿関連業者
地価上昇による転売益を狙った不動産取引のファイナンス需要


②現在


借手は貸家業を営む個⼈を含む、幅広い投資家
賃料収⼊から所要経費を差し引いたキャッシュフローによって元利返済していくことを前提とする⻑期貸出



2.不動産業向け貸出の増加、日銀が指摘する問題点



・地域金融機関では、貸出全体に占める不動産業向け貸出の比率が上昇を続けており、同比率が3割を超える先がみられる。

・不動産業向け貸出比率を高める金融機関ほど、⾃⼰資本比率が低い傾向も窺われる。

・不動産業向け貸出の増加は、大型の不動産取引業向けが中心であったバブル期とは異なり、REITや不動産ファンド、個人による貸家業といった賃貸収入目的の中長期投資向けが中心となっている点に特徴がある。

・中小企業や個人など、必ずしも損失吸収力の高くない借り⼿の比重が高い。

不動産賃貸業向けの貸し出しは、借り手が幅広い投資家に分散しているが、全体としては、中長期の空室増加・賃料下落といった共通リスクに晒されている。人口や企業数の減少、成長期待の低下といったバブル期とは異なるファンダメンタルズのもとで、将来の物件需要に対して過大投資となっていないかという点は注視していく必要がある。



3.不動産融資で日銀が金融機関に求めるリスク管理


日銀は貸家業からの資金需要は、比較的高い貸出金利が確保できる不動産業の近年におけるデフォルト率の低さ、不良債権比率の低さも、同産業向け貸出を積極化させる誘因だと分析しています。

現在の不動産市場については、バブル期のような過熱状態にはないとしても、貸出対象や期間等の面で、当時とは性質の異なるリスクが蓄積されている可能性があるとしており、貸出実行時点における実査、キャッシュフロー計画の妥当性確認等を適切に行うとともに、実行後の管理(空室率・賃貸収入のモニタリング、適切な引当の実施等)を貸付期間を通じて継続していく必要があるとしています。

また、アパートローンは一般的に返済期間が長く、残高が積み上がりやすいため、リスクが長期化します。

景気悪化時に不動産市場の流動性低下により大幅な価格下落が発生する可能性も意識したリスク管理を金融機関に求めています。


4.過去の金融システムレポートの不動産関連の記載



過去の金融システムレポートの不動産関連の記載を見ると、その後の不動産向け融資に大きな影響があることが分かります。

①2015年4月


「不動産業実物投資の対GDP比率」が過熱方向に変化した。
もう1つの不動産関連指標である「不動産業向け貸出の対GDP比率」に過熱感はなく、不動産の取引量や価格動向など、その他の幅広い情報も含めて総合的にみれば、不動産市場に過熱感はみられていない。

②2015年10月


多くの指標は、リーマン・ショック前の不動産ブームの頃を下回っており、不動産市場全体としては過熱の状況にはないと考えられる。
ただし、東京都心等では高額物件取引もみられている。また、銀行の不動産関連投融資も積極化しつつある他、中小の低信用先の資金調達では借入れが増加する兆しも窺われている。

不動産向け融資が増えて日銀が警戒を始めると下記のレポートが出されます。


③2016年3月 金融システムレポート別冊シリーズ


地域金融機関の貸家業向け貸出と与信管理の課題
・地域や物件特性等に基づく類型化やデータ・情報の整備
・入口審査における収支見通しの検証(先行き入居率の妥当性検証方法や下方ストレスのかけ方等)
・中間管理の頻度やポートフォリオ分析
等に充実の余地がみられた。

金融機関は、これらの中から、自らの貸家業向け貸出の実情(残高の大きさ、営業推進方針等)を踏まえた対応を講じていく必要がある。

このレポートを機に日銀はアパートローンへの警戒感を強くしていきます。

④2016年10月


大都市圏を中心とする地価や取引額の上昇傾向、不動産大企業の実物投資や負債調達の増加など、不動産市場が徐々に活発化していることを示す動きが引き続きみられるほか、先行きを展望すると、東京オリンピック関連をはじめ、大都市圏での建設・再開発の動きが継続すると考えられる。
マイナス金利環境の今後の影響も含め、不動産市場の状況については、今後も注意深く見守っていく必要がある。

⑤2017年4月


地域銀行の不動産業向け貸出は、近年、賃貸不動産業向けを中心に増加。これには、地域景気の改善や金利の低下が寄与している。
ただし、近年は、不動産業向け貸出残高の実績が、経済の実勢で説明できる水準(推計値)から上方に乖離。

また、個別行毎の乖離率の分布をみると、九州などで一部の銀行が、経済の実勢に比べ貸出を大幅に増やしている。
地域によっては、賃貸住宅の空室率が高まっており、これまで以上に入口審査や中間管理の綿密な実施が重要。

⑥2017年10月


不動産業向け貸出は、高めの伸び率で増加を続けているが、その増勢は足もと幾分鈍化。
新規実行ベースでは個人による貸家業向けが前年比マイナスに転じているほか、個人の資産管理会社や地場の不動産業者を含む中小企業向けの伸び率も急速に低下。

⑦2018年4月


全体として過熱の状況にはない。不動産業向け貸出残高の対GDP比率は上昇しているが、金融機関の間では、不動産市場の調整リスクや与信の業種集中などを意識し、貸出スタンスを慎重化させる動きが徐々に広がっている。

⑧2018年10月


貸出特性を踏まえたリスク管理の向上が必要。
不動産賃貸業向けの貸出期間は比較的長期に及ぶ。人口減少による賃貸アパートの需給緩和というストレスが全国各地で共通かつ慢性的にかかり続けるもとで、借り手の返済原資である家賃収入が長期間にわたって共通リスクに晒される。
適切な引当率の設定や審査・管理の改善等を通じて、リスク管理の実効性を高めていく必要がある。


5.2019年4月レポートの投資用不動産向け融資への影響


アパートローンイメージ、お金お金と家


過去のレポートが金融機関の融資姿勢に大きく影響していることは間違いありません。
参照:日銀アパートローン監視強化 収益物件は積算評価が高ければ安全?

今回のレポートで日銀は地域金融機関に、ミドルリスク企業向けや不動産業向け貸出、投資信託を通じる投資拡大等に対応した管理強化を求めています。

実行後の管理(空室率・賃貸収入のモニタリング、適切な引当の実施等)を貸付期間を通じて継続しなさいと言っていますから、金融機関は、その部分にも人員とコストを割かなければならなくなります。

アパートローンを融資しすぎると金融庁には目をつけられ、実行後の管理も面倒となると、ますます投資用不動産向け融資は厳しくなるかもしれません。

不動産買う人の大半は融資を利用します。
このような市況になると不動産価格は需給のバランスで下がる可能性があります。
融資をしてもらえる可能性のある金融機関の開拓をたくさんできた人が良い条件で物件が買えるという状況になってきたのかもしれません。


2019年4月5日金曜日

投資用不動産向け融資の今後

不動産投資イメージ


金融庁は、アパートなど投資用不動産向け融資に関する銀行へのアンケート調査結果を発表しました。
参照:投資用不動産向け融資に関する金融機関へのアンケート結果

このアンケートは、スルガ銀行の不正融資問題やTATERUが不正書類を提出し、融資を引き出した西京銀行の問題などが発生したため、2018年10~11月にかけて地方銀行を含む121の銀行、261の信用金庫などを対象に行われたものです。





調査結果では、給与明細などのエビデンス原本を「必ず確認する」と答えた銀行は25%という結果もあり、ずさんな審査が行われていたことが分かっています。

この記事では、公表されたアンケートの回答から、今後の投資用不動産融資の方向性について考えてみます。


ー目次ー

1.銀行へのアンケート結果の概要

2.今後の投資用不動産向け融資の方向性
 ①不動産の収益性に着目した融資審査に移行:物件の収益性や事業としての妥当性を審査
 ②物件価格の妥当性、顧客の財産・収入の状況を金融機関自らが把握する
 ③融資実行後、期中管理の徹底:延滞さえなければチェックされないという現状は変わる

3.金融庁から不動産投資家に向けたメッセージ
 不動産投資家は賃貸事業経営を行うという認識を

4.投資用不動産向け融資のハードルは上がる
 アパートローン審査は住宅ローンの延長ではなくなる


1.銀行へのアンケート結果の概要



金融庁の行ったアンケートに対する金融機関の回答の概要は以下の通りです。

①銀行における投資用不動産向け融資、一棟建(土地・建物)向け融資の実行額は平成29年3月期をピークに減少。

②投資用不動産向け融資を積極的に推進する金融機関は減少し、消極的な態度を取る金融機関が増加。

③スルガ銀行の問題が広く認知されるまで、多くの金融機関では紹介業者の業務に係る適切性を検証するという着意がなかった。

④賃貸事業が生み出すキャッシュ・フローを主たる返済原資としたうえで、長期的な事業・収支計画の妥当性を見極めることが徹底できていない金融機関も存在。

⑤自らが主体的に物件の売買価格の妥当性を十分に検証するという点で、改善の余地がある金融機関も存在。

⑥顧客の財産・収入の状況を、紹介業者に依存しすぎず自ら把握するという点で、改善の余地がある金融機関も存在。

⑦物件収支の見込みやリスクに関する顧客の理解度の確認が徹底されていない金融機関が相当数あり、実効性確保に向け改善・見直しを行うケースも多い。

⑧残高の多寡や延滞の有無等の形式基準にとどまらないリスクベースでの期中管理が行われるよう、改善を図る事例が多い。




2.今後の投資用不動産向け融資の方向性



①不動産の収益性に着目した融資審査に移行


金融庁は投資用不動産向けの融資は住宅ローンではなく、事業性融資の性格が強いため、賃貸事業としての妥当性や返済可能性を見極めることが重要だとしています。

・返済原資は物件が生み出すキャッシュ・フローである。
・物件がキャッシュ・フローを生む期間をできる限り客観的に検証し、当該耐用年数と整合的な融資期間を設定することが必要。
・ストレスも勘案した完済までの収支シミュレーションに基づいて審査を行う。


融資においては、賃貸事業が各期間に生み出すキャッシュ・フローを主たる返済原資としたうえで、長期的な事業・収支計画に基づき返済の可能性を見極める必要があるが、こうした点が徹底できていない金融機関も存在すると指摘しています。

今後は、給与収入や積算評価に依存した審査ではなく、物件の収益性や事業としての妥当性に着目した融資審査に移行していくことが予想されます。

法定耐用年数超の物件は、建築士などの有資格者が作成したレポートなど客観的な資料をもとに経済耐用年数の判断をするという傾向になるかもしれません。

既存不動産の活用という面では、法定耐用年数にこだわらず、客観的に建物の状況を判断してくれる金融機関があるということがプラスになるので、取り組んでくれる金融機関が出てきてくれるといいのですが。



②物件価格の妥当性、顧客の財産・収入の状況を金融機関自らが把握する


融資対象物件の周辺の取引事例における家賃相場・入居率を確認すること、エビデンスの原本確認だけでなく顧客の財産・収入が職業・年齢・家族構成等に照らして妥当かどうかを検証することを金融機関に求めています。

融資審査が煩雑になりますので審査の長期化が予想されます。



③融資実行後、期中管理の徹底


融資実行後に空室率・賃料を確認しない、実績を踏まえた収支見込の更新を行っていないと回答する金融機関が多かったことから、「延滞発生や苦情・相談のあった場合には、不適切な行為の可能性も想定して十分な検証を行う必要がある」としています。

残高の多寡といった形式基準にとらわれることなく、顧客属性・紹介業者別にグルーピングして管理のレベルを変える等のリスク管理を求めています。

融資実行をしてしまえば、延滞さえなければチェックされないという現状は変わる可能性があります。




3.金融庁から不動産投資家に向けたメッセージ



金融庁は「投資家において留意すべき事項」という項目で投資家にメッセージを発信しています。

①顧客(投資家)においては、目先の利回りにとらわれることなく、大規模修繕の必要性や物件収支が下振れた際の返済余力や当初想定した価格で売却できない可能性も考慮しつつ、長期的な事業・収支計画の妥当性を判断する必要。 

②目先の収入が良好であっても、環境変化・物件の劣化等により賃料下落・空室が生じたり、サブリース契約があっても保証賃料の減額や契約解除が生じる可能性がある。

③その結果、物件の収支がマイナスとなった場合は、自らが損失を被るおそれがある。

④顧客(投資家)においては、賃貸事業経営を行うという認識のもと、物件の現況や周辺の情報を自ら把握したうえで投資判断を行う必要。


全ての項目が不動産に投資をするうえで当たり前のことですが、融資(フルローン・オーバーローン)にばかり着目するばかりで当たり前のことが軽視されていたことは事実だと思います。

融資が受けられるという理由で、現地を見ずに地方の物件を購入した人もいるでしょうし、長期的な収支を見ずに単年の収支だけで物件の良し悪しを判断した人もいたと思います。

スルガ銀行の問題では投資家側の被害者意識が強く、マスコミ報道も投資家を詐欺の被害者のように扱ったために、金融庁の指摘した事項について、投資家側に自分の見識の甘さを省みる機会が失われたように感じます。

不動産投資に失敗しないために、これから投資用不動産を購入して不動産賃貸業を始めようと言う人は、「事業や投資は自己責任である」という原則を改めて確認してほしいと思います。



4.投資用不動産向け融資のハードルは上がる


高いハードルのイメージ




今回、金融庁が指摘した項目の通りに融資審査を行うと投資用不動産向け融資のハードルは上がります。

物件が生み出すキャッシュ・フローを主な返済原資として給与収入は含めないとすると、返済原資が減るのですから、収益性の低い物件は融資が受けにくくなります。

耐用年数を客観的に検証して融資期間を決めるとすると、金融機関に建物の耐用年数を客観的に検証する能力はありませんから、法定耐用年数を超過した物件は融資が受けにくくなります。

金融庁が具体的に指摘をしている部分については、このやり方で審査をするように促していると考えられます。

今まではサラリーマンの給与収入と土地建物の積算評価で住宅ローンの延長のような審査をしていた金融機関は審査の方針を丸ごと変えなければならなくなります。

金融機関がすぐに対応できるとは思えませんが、金融庁には逆らえないでしょうから、審査の方針は少しずつ変わっていくでしょう。

これからは、事業的な視点での物件選定が今まで以上に重要になるだろうと思います。


2019年4月2日火曜日

2019年4月住宅ローン金利 横浜銀行は金利引き下げ幅が最大2.005%に

住宅ローンイメージ


2019年4月の住宅ローンの金利が公表されています。

一部の銀行で固定金利の引き上げがありましたが、概ね横ばい状態となりました。
変動金利については、変わらず横ばいとなりました。

横浜銀行は店頭表示金利からの金利引き下げ幅を最大年1.875%から2.005%に拡大しました。

黒田日銀総裁は、3月15日の定例会見で「政策金利については、2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定しています。」と発言しており、しばらくの間は変動金利は低金利状態が続くと思われます。




2019年4月の住宅ローン金利一覧
変動金利3年固定10年固定20年固定
三菱UFJ銀行0.5250.3900.690
みずほ銀行0.5250.5500.6501.150
三井住友銀行0.5250.8001.1001.680
りそな銀行0.4700.9951.1952.245
三井住友信託銀行0.4450.4500.6501.070
横浜銀行0.4700.5450.7451.350
ソニー銀行0.4570.6500.8901.315
新生銀行0.6000.7501.0001.450
東京スター銀行0.4500.8000.900
イオン銀行0.5200.4300.740
住信SBIネット銀行0.4471.2001.1101.210
楽天銀行0.5270.8241.043
じぶん銀行0.4571.4201.5401.800
※金利は毎月見直されます。申込時ではなく、借入時の金利が適用されます。
※上記金利は金利引き下げ後の金利です。金利の引下げ幅は、審査結果等により決定します。
フラット35
15~20年21~35年※借入90%以下 機構団信付
ARUHI1.2101.270
住信SBIネット銀行1.2101.270
楽天銀行1.2101.270
イオン銀行1.2101.270

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