2018年12月26日水曜日

進まない住宅ストック活用と空き家問題

不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME'Sによると目黒区の建物面積100m²の場合の中古一戸建て平均価格は8,279円です。

しかし、日本全国で見ると500万円以下で買える戸建がたくさんあります。
この背景には深刻な地方の空き家問題があります。

今回は日本の空き家問題とストックの活用が進まない理由について説明します。



◯空き家はストックか?



国交省の調査によると空き家の320万戸のうち耐震性があり、不朽・破損のない空き家は103万戸。

103万戸のうち駅から1㎞圏内で簡易的な修繕で利用できる空き家は48万戸とのことです。

空き家のうち約70%が耐震性不足か壊れている家で残りの約30%のうち15%は駅から1㎞以上の不便な立地条件で利活用が困難ということ調査結果が出ています。



◯海外の空き家問題との比較



日本の空き家率は13.5%、アメリカは10%程度、イギリスは2.6%程度です。
日本の空き家率が高いことが分かります。

海外では雇用の流動性が高いこともあり、引越しが多く、売ることを考えて住宅を購入するため、できるだけ長持ちする家を建てたいという考えのようです。

「家は一生に一度の買い物」と言われる日本とは社会情勢や民族性の違いも影響しているのかもしれません。


◯ストックと言える空き家が15%しかない理由


①日本は地震大国


2000~2009年にかけての調査によると全世界のマグニチュード5.0の10%、マグニチュード6.0以上の地震の20%が日本周辺で発生しています。

日本は地震の多い国なので耐震基準を満たさない住宅はストックとして利用することはできません。

②新築志向でリフォームをしない


日本における全住宅流通量(既存流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェア13.5%です。(平成20年:住宅・土地統計調査・住宅着工統計)

つまり住宅を購入する10人中1~2人弱が中古住宅を購入するということになります。
一方、海外では例えばフランスが66.4%、アメリカが77.6%、イギリスにおいてはなんと88.8%という非常に高い中古住宅供給率を誇っています。

住宅投資に占めるリフォームの割合は、2011年時点で日本が27.9%なのに対して、イギリスは57.3%、フランスは56.4%、ドイツは76.8%となっており、日本の倍以上の費用をリフォームにかけていることが分かっています。

③低品質


日本の住宅は高度経済成長期に「質より量」で建てられたものが多く、住宅の質としては良いものではありません。

例えば、冬の家が寒いのは日本だけの話で欧米の住宅は断熱性能が格段に高いのです。
建材メーカーのYKK APによると海外の住宅に比べて日本の窓の断熱基準は低いそうです。

「新耐震基準」後の建物なら耐震性においては世界に類をみない構造強度を誇っていますが、断熱性能は低レベルということです。

近年では省エネ住宅や気密性の高いマンションの分譲などで断熱性能は上がっているため築年数の古い物件の断熱性能の低さが際立ってしまいます。


◯空き家問題を解決するには


①未熟な不動産市場を改善


以前に書いた記事でも日本の不動産市場の問題点を指摘しました。
「日本の不動産取引の現状と問題点①」
https://fp-s-fudousan.blogspot.com/2016/11/blog-post_21.html

日本では中古住宅、特に建物に関する情報が極端に少なく購入者は安心して中古住宅を購入することができません。

市場の透明性が非常に低く、中古住宅の成約データーが蓄積されていないことも中古住宅の取引が増えない一因です。

日本には木造住宅の法定耐用年数が22年のため「25年で建物の価値はゼロになる」というマインドがあります。

成約データーが少ないため建物を含めた不動産価値が正しく査定できず、上記のマインドの影響もあって実際に建物が使用できる状態であるかどうかは重視されません。

結果として築年数の古い物件は壊して更地にしたほうが高く売れるという現状になっています。

後述するインスペクションの普及が進まないことも中古住宅の流通が増えない原因と考えられます。

②インスペクション


インスペクションとは建築士など専門家が建物の劣化や不具合などの調査を行い、欠陥の有無や補修すべき箇所などを客観的に検査するものですが現状ではそれほど普及していません。

そんな現状を変えるためインスペクションが活用されるように宅建業法の改正(平成30年4月1日施工)が行われました。

インスペクションが普及しているアメリカやイギリスなどは購入した家に不具合があった場合、補修の責任は買主にあります。

そのため購入する家に不具合がないか買主が費用を負担してインスペクションを行います。

日本は売主が責任を負うため普及が進まない面もあると思いますが、民法改正で買主保護が強まるため、売主がトラブル回避の目的でインスペクションを行うケースが増える可能性はあります。


③法定耐用年数と担保評価


日本の木造住宅の法定耐用年数は22年で22年経つと価値はゼロという考え方です。
アメリカでは法定耐用年数が27年ですから日本だけが極端に短いわけではありません。

アメリカでは売買時、インスペクションし必要な修繕箇所を修繕すると、耐用年数がリセットされ、買主は更に27年の減価償却を受けることができる制度があります。

日本では税務上は修繕した部分の減価償却を受けることはできますが耐用年数がリセットされるわけではないので中古住宅を買った人は築年数に応じた耐用年数となります。

自宅は減価償却できないので税務上の恩恵があるのは収益物件だけということになりますが、耐用年数の問題は銀行の融資に関連します。

住宅ローンを利用する場合には銀行もある程度条件を緩和していますが、収益物件については厳格に耐用年数期間内しか融資をしない銀行が多く、修繕は考慮されないことが多いです。

ストックの有効活用という点ではリフォームされた状態の良い建物も放置された廃墟のような建物も同価値と査定されてしまう耐用年数重視の銀行の担保評価については現実に即しておらず中古住宅の流通を阻害していると言えます。

建物の耐用年数に関連してこんな記事が出ていました。
「西武信金、投資用不動産に過剰融資か 耐用年数を法定の2倍に」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181225-00000004-mai-bus_all

この記事は西武信金が不動産鑑定士に依頼し、対象物件の耐用年数を法定を大幅に上回る水準で独自に算出したことを問題視しています。

不動産鑑定士に依頼して耐用年数を算出しても法定耐用年数を超えると問題視されてしまうのが不動産融資の現状です。


〇空き家の所有者になる可能性がある人は



不動産関連の比較査定サイト「スマイスター」を運営するリビン・テクノロジーズ株式会社が「実家が空き家になる可能性」を調査したところ、『ある』(30.4%)、『既になっている』(9.7%)と答えた人が約40%という結果が出ています。

日本の戦後の特殊な住宅事情や新築志向など深く根付いているマインド、東京一極集中などの事情で空き家の問題は簡単に解決できるものではありません。

空き家は地域や立地条件によって対策が変わります。
空き家を取得すると管理の手間もかかりますし税金の負担も発生しますので、相続などで空き家の所有者になった(相続する可能性がある)場合には利活用の可能性などを専門家に相談することをお勧めします。



0 件のコメント:

コメントを投稿

この記事が参考になりましたら、 下の2つのバナーをそれぞれ1クリックお願いします。

2019年1月住宅ローン金利 長期固定金利・フラット35引き下げ

2019年1月の住宅ローンの金利が公表されています。 ほとんどの銀行が長期固定金利を引き下げました。 フラット35の金利も2カ月連続で低下となりました。 2019年1月の住宅ローン金利一覧 変動金利 3年固定 10年固定 20年固定 三菱UFJ銀行 0....