2018年6月29日金曜日

スルガ銀行の不正融資問題② 貸した側の銀行の責任と今後の収益物件融資への影響は?

不動産投資失敗


シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズが経営破綻した問題ですが、スルガ銀行の行員の関与が疑われ、融資審査が問題になっています。

運営会社のスマートデイズが経営破たんしてしまったため、被害者弁護団の矛先は融資をしたスルガ銀行に向いています。


この記事では、スルガ銀行不正融資問題で貸した側の銀行の責任はあるのか説明します。


ー目次ー


1.判例で認められた銀行の貸し手責任
 ー銀行が建築会社を紹介し収益物件の建築を提案した事案
2.かぼちゃの馬車問題でスルガ銀行の貸し手責任が認められるのか?
 ー焦点は「特段の事情」
3.今後の収益物件への融資はどうなる?
 ー貸し手責任が議論されると不動産融資に影響が?
  



1.判例で認められた銀行の貸し手責任


判例



銀行の貸し手責任が認められた裁判例は少ないのですが、「最一小判平成18年6月12日」という判例があります。

銀行が建築会社を紹介し収益物件の建築を提案した事案です。

■事実関係


①取引銀行から土地の有効利用についてノウハウのある建築会社を紹介された。
②銀行・建築会社から建物の建築・投資プラン・返済プランを提示された。
自己資金28,770万円及び銀行からの借入金9,000万円の合計37,770万円で
建物を建築し,建物の賃貸部分からの賃料収入を借入金の返済等に充てた場合の
具体的な資金計画等が記載されていた。
③自己資金については,建物を建築した後,本件北側土地を約3億円で
売却することによってねん出することができると説明した。
④計画に基づき建物の建築請負契約を締結し、建物を建築した。
⑤銀行は建物の建築資金等として合計46,450万円を貸し付けた。
⑥売却予定だった北側土地を売却すると容積率オーバーで違法建築物と
なることが分かる。
(建築主・銀行担当者はこの問題を知らなかった)
⑦建築主事が敷地の二重使用に気付かなければ建物の建築に支障はないとの
見込みに基づいて計画を進める
⑧建物完成後、北側土地が予定通りに売却できず返済が滞り競売となった。

■原告の主張


・貸し付けを受けて建物を建築したのは、北側土地が3億円で売れて資金調達ができることが前提だった

・実際には売却をしてしまうと、違法建築物となってしまうため売却は不可能で、もともと返済の目途がたたない計画だった

■判決の概要


建築会社の担当者が顧客に対し計画には、建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反がある。

銀行には、収益物件の建築基準法上の問題や隣地の売却可能性を調査し、顧客に説明すべき信義則上の義務を認める余地がありうるとして、控訴審判決を破棄差し戻しました。

■考慮された特段の事情


一般に消費貸借契約を締結するに当たり,返済計画の具体的な実現可能性は借受人において検討すべき事柄であり,本件においても,銀行担当者には,返済計画の内容である本件北側土地の売却の可能性について調査した上で、上告人に説明すべき義務が当然にあるわけではない。

裁判所は一般論として返済計画の実現可能性について上記のように説明しています。

しかし、裁判所は以下の特段の事情を考慮して、控訴審判決を破棄差戻しとしています。

①銀行が土地の有効利用を図ることを提案して建築会社を紹介
②北側土地の売却により、返済資金をねん出することを前提とする収益物件に関する経営企画書や投資プランを作成し、建築会社担当者と共にその内容を説明
③銀行担当者が上記説明をした際,北側土地の売却について、銀行も取引先に働き掛けてでも確実に実現させる旨述べる

建築会社を紹介した、返済計画を立てたというだけでは、返済計画が破たんしたとしても金融機関に説明義務違反を認めていませんが、銀行の積極的な関与などの特段の事情があれば、銀行の貸し手責任を認めるという事例です。


2.かぼちゃの馬車問題でスルガ銀行の貸し手責任が認められるのか?


銀行



銀行が融資をしなくて会社が倒産したり、経営に行き詰った会社から融資金を過剰に過剰に回収したり、銀行が悪者になるのはお金を貸してくれない時が多いのですが、貸し手責任はお金を貸した責任を追及するという責任です。

返せない人にお金を貸すと貸したお金が返ってこないので、銀行は困ってしまいます。

貸したお金が返ってこなければビジネスにならないので、普通は返せない人にはお金は貸さないのですが、銀行員のノルマ達成のためなどの理由で、ごく稀に起きる問題です。

上記の判決で裁判所は、「返済計画の具体的な実現可能性は借受人において検討すべき事柄」としていますので、貸し手責任が認められるかどうかは、特段の事情の有無が焦点になると思います。

・不動産業者がスルガ銀行に提出する融資の審査書類で、購入者の預金残高や年収を水増しした書類を作成。
・スルガ銀行は通帳の原本などの確認を怠り、審査を通していた。

融資にあたってスルガ銀行には、年収や資産背景の審査規定や融資額は、物件価格の90%以内という規定があります。

不動産業者は自己資金や年収の資料を偽造したり、フルローンやオーバーローンで融資を受けさせるために実際の契約書とは別に、販売価格を高くしたローン用の契約書を作成しスルガ銀行から融資を引き出していました。

フルローンやオーバーローンを斡旋している自称「融資に強い不動産業者」が、エビデンスの偽造や二重契約が行っているのは業界では知られた事実でしたが、銀行員はあくまでも知らないということになっていました。

銀行側が知らなければ、銀行は融資金をだまし取られた側なのですが、かぼちゃの馬車の案件では銀行員が偽造に関与している証拠が出ているので、「銀行員の関与が特段の事情と認められるか」、「銀行員の関与が個人の責任か銀行組織の責任か?」が貸し手責任が認められるポイントになりそうです。

個人的にはスルガ銀行が、法人として貸し手責任を追及される可能性は低いと思います。

この問題のせいで株価が1/3くらいに下がっていますので、株主から訴えられる可能性の方が高いのではないでしょうか。


3.今後の収益物件への融資はどうなる?


アパートローン



今のところ、私がヒアリングした銀行では、かぼちゃの馬車問題が原因で融資基準を厳しくしたという話しは聞きません。

融資基準は厳しくなっていないけれど、手続きを厳しくした銀行はあるのかもしれません。

先日、日経新聞に一物件一法人スキームの記事がでました。
※6月26日日経新聞「不正融資の黙認、スルガ銀だけじゃない」
これだけ報道等がされているので、エビデンスや契約書の原本確認の徹底など、銀行も気をつけるようにはなると思います。

数年前から金融庁はアパートローンの監視を強めていました。
参照:日銀アパートローン監視強化 収益物件は積算評価が高ければ安全?

金融庁長官は退任しますが、新しい長官の下でも金融庁が、今までの方針を変えなければ、「将来的な賃貸需要見込み」・「金利上昇リスク」・「空室・賃料低下リスク」、このような審査項目が加わり、土地建物の価値、借り手の属性だけの評価ではなく、事業性融資としての側面が強くなるのではないかと思います。




2018年6月1日金曜日

スルガ銀行の不正融資問題① アパートローンで銀行は何を審査しているのか?

アパートローン


5月29日の「ガイアの夜明け」でも取り上げられたかぼちゃの馬車問題。

シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズが経営破綻した問題ですが、スルガ銀行の行員の関与が疑われ融資審査が問題になっています。

住宅ローンと比較して、「普通のサラリーマンが1億円の融資を受けられるなんて異常だ」と解説している記事があったりします。

この記事では、銀行はアパートローンでどんな審査をしているのか説明します。


ー目次ー


1.アパートローンとプロパーローンの違い
 ①アパートローン
 ②プロパーローン
2.アパートローンと住宅ローンの違い
 ー使用目的と返済財源
3.アパートローン審査の本質
 ー貸したお金が返ってくるか




1.アパートローンとプロパーローンの違い


アパートローン審査

①アパートローン


アパートローンは個人投資家が、資産運用の一環で、不動産投資に取り組む際に用いる商品です。

住宅ローンなどと同じパッケージ化した消費性資金のひとつで、年齢や年収、購入物件の担保評価や返済比率※など多くのチェック項目があり、チェック項目をクリアすれば融資を受けることができます。

新設法人を利用して物件を購入する場合も、多くのケースがアパートローンに準ずるものと思われます。

※返済比率とは
1年間の元利金等返済額の年収における割合


②プロパーローン


様々な企業や個人事業主に融資する、一般的な事業資金融資です。
不動産賃貸業も「事業」として認められていて、収益物件=設備投資という考え方で融資します。

「物件の担保評価」「物件の収益性」だけでなく、企業の財務力、過去の実績などに対して融資が行われるため、審査は複雑でアパートローンに比べて、融資の決定には時間がかかります。


2.アパートローンと住宅ローンの違い




アパートローンと住宅ローンとの違いは「使用目的」と「返済財源」です。

アパートローンと住宅ローンは自分が住むか、人に貸して家賃収入を得るためのものか、という使用目的の違いがあります。

住宅ローンは自宅の取得という目的のため、審査基準が事業目的のアパートローンよりも緩くなっています。

住宅ローンの借入可能額は、アパートローンとは異なり、融資を受ける人の税込年収によって決まります。

返済比率や審査金利は銀行によって異なりますが、年収の〇%以内の返済比率なら給与の中から支払いができるだろうという判断で融資の可否を決定します。

賃貸事業目的のアパートローンは返済財源が賃料収入です。

しかし、アパートローンの審査で銀行は、直接の返済財源ではない個人の属性、年収・資産背景を審査対象とします。
その理由は下記の2点です。


①家賃収入ゼロになっても、給与収入で返済は可能か?

何らかの理由で家賃収入が返済を下回るようなケースが発生したとしても、給与からの持ち出しで返済が可能か審査しています。

②給与収入や手持ちの資産で完済までに発生する赤字を補填することが可能か?

定期的に発生する物件の大規模修繕や不測の事態による修繕を、預金や給与収入で対応可能か審査しています。



3.アパートローン審査の本質


アパートローン審査基準


銀行ごとに担保評価のやり方、家賃収入の評価のやり方、返済比率等、審査項目への考え方は異なります。

個別の評価のやり方は各銀行の方針がありますが、大前提として銀行は「貸したお金が返ってくるか」を審査しています。


銀行としてリスクが高いと感じれば金利を高くして対応します。
スルガ銀行の件で考えれば金利は3.5~4.5%のケースが多いでしょうから、リスクの高い案件にリスク回避のため、高い金利で対応していたことになります。

貸したお金が返ってくるか審査してリスクに応じて金利を設定するというのは、お金を貸す側の対応としては当然のことです。

銀行は慈善事業ではないので、貸したお金に利子がついてが返ってくるかが重要ですから、投資家が儲かるかどうかは審査していないだろうと思います。

担保評価を積算評価(土地建物のコスト)で判断する銀行が多いことが、銀行は物件の収益性にはさほど興味がないことを表しています。

銀行は投資家が投資に失敗したら、土地建物の原価で物件を処分して返済しきれないお金は、給与収入で返してくれればいいので、物件の収益性はそれほど重視されないのです。

物件の担保評価さえ良ければ、誰でも融資OKとならないのは、アパートローンは物件への融資ではなく大家さん(人)への融資だからです。
返済財源の家賃とその人の返済能力も審査しているからということです。


このブログで「銀行の融資が受けられる=優良物件ではない」と度々申し上げているのは、銀行にとっては、物件の優劣や収益性は重要ではなく、貸したお金が返ってくることが重要だからです。

「銀行は投資家の投資の成果ではなく、貸したお金が返ってくるかどうかを審査している」
と考えれば、高い金利のスルガ銀行からしか融資を受けられなかったシェアハウス投資の被害者は、もう少し慎重になれたのではないでしょうか。

不動産オーナーは不動産賃貸業の事業者であり消費者ではありません。

これから融資を利用して物件を買おうと考えている人は、経営者の目線で事業計画や契約内容をしっかり分析して「フルローンが利用できる=投資は成功する」という考えは捨ててください。

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