2017年10月30日月曜日

収益物件売却時の税金 

収益物件の情報サイト「建美家」によると金融機関の融資状況が厳しくなったと感じる人が増えていて、高騰した収益物件価格も調整局面が近いと言われ始めています。

このような市況の影響もあり、収益物件の価格が高騰しているうちに利益確定のために収益物件を売却する人が増えています。

リーマンショック後に収益物件を購入した人は利益が出ていることもあるので、税金について確認しておかないと思わぬ支出で、こんなはずじゃなかったということになってしまうこともあります。

今回は収益物件を売却した時にかかる税金について取り上げます。



〇個人が所有している収益物件を売却した場合




賃貸マンションのような収益物件を売却した場合も、居住用不動産の売却と同じく譲渡所得(売却益)に対して所得税・住民税が課されます。

譲渡損失(売却損)が発生する場合は、所得税・住民税は課税されません。

その譲渡損失は、同年中に売却した他の不動産の譲渡益と損益通算することは可能ですが、給与所得などの他の所得と損益通算することはできません。

個人が土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して計算することになっています。


➀収益不動産を売却した場合の税金の計算方法



■譲渡所得の計算式  
譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費※1 + 譲渡費用※2)

上記の計算の結果、譲渡所得がプラスになれば、譲渡益になります。
つまり売却によって、「いくら儲かったのか」に対して課税されます。
売却の結果がマイナスになれば、譲渡損となり課税されません。

※1 取得費
売った土地や建物の購入代金(建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いた金額)
→1年間の減価償却費の計算方法(定額法の場合):取得価額 × 定額法の償却率

購入金額が不明な場合には売買価格の5%を取得費とみなします。
(相続の場合は取得費を引継ぎ)

他には取得のために支出した立退料・測量費・造成費用などのうち、必要経費に算入されていないものを含みます。

減価償却されていたり、経費計上したものは2重に計上することはできないので、取得費とすることはできません。

建物代金を高く設定した人は建物価格が減価償却されているため、取得費が少なくなる可能性があるので、売却の時に譲渡所得税が高額になることがあります。

※2 譲渡費用
売却に要した費用を指します。
具体的には仲介手数料・司法書士費用・測量費・売買契約書の印紙代・立退料、などがあります。


■税額の計算式    
税額 = 譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)

〈税率〉
短期(譲渡の年の1月1日で5年以下)  39.63%(所得税30% 住民税9%)
長期(譲渡の年の1月1日で5年超)   20.315%(所得税15% 住民税5%)


②計算例


・平成24年9月1日に購入したアパートを売却した場合の計算例

売却した日 平成29年10月1日
売却価格 5,000万円
購入時の物件価格 6,000万円 内訳:土地3,000万円・建物3,000万円
購入時の経費は運営時に経費計上済み、建物は2,000万円減価償却済み
譲渡費用 200万円

譲渡所得の計算
売却価格5,000万円 -(取得費:4,000万円 + 譲渡費用:200万円)=800万円
取得費は購入価格6,000万円 - 減価償却済みの建物価格2,000万円
譲渡所得 800万円×39.63%=317万400円


平成24年9月1日に購入した不動産を平成29年10月1日に譲渡した場合、カレンダー上は5年を超えても、譲渡した年の1月1日(平成29年の1月1日)で5年を超えなければ、長期譲渡所得となりません。
平成30年1月1日以降に譲渡した場合に長期譲渡所得となります。



〇法人が所有する収益物件を売却した場合




法人が所有する収益物件を売却した場合、利益が出ても損失が出ても、他の所得(売上など)と合算します。

不動産の売却益が分離課税される個人との違いです。
法人は他の所得と合算して法人税率をかけて税額を求めます。

法人税率は売上や資本金によって異なります。

個人の場合、所有期間によって長期短期の税率がありましたが、法人には所有期間は関係ありません。

〈計算方法〉
利益 = 売却額 -(売却した土地建物の簿価 + 譲渡費用)
税額 = (利益 + 他の所得) × 法人税率




個人法人ともに平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合には、1,000万円の特別控除(法人の場合は損金の額に算入)を受けることがあります。
※控除を受けるには一定の条件があります。


アパートの売却時には「税金」と「経費」かかります。
売却をしてから「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、事前に売却時にかかる税金、経費を確認しておいてください。
なお、具体的な税額計算は税理士にご相談ください。


2017年10月23日月曜日

不動産投資は法人と個人どちらでするべき?

1物件1法人のスキームが流行してしまったせいか規模の大小にかかわらず、法人での不動産投資を希望する方が増えています。

今回は危ないスキームなど融資の話は別にして法人・個人での不動産投資について、税制面などのメリット・デメリットの比較をしてみようと思います。



○個人と法人の税率の違い



・個人が支払う税金

➀所得税 (課税所得金額×税率-課税控除額)
※国税庁タックスアンサーより転載







②住民税 (課税所得金額×10%+5000円) ※東京都の場合
③個人事業税 (課税所得金額-290万円)×税率


・法人が支払う税金

➀法人税  
②地方法人税
③住民税 
④事業税 
⑤地方法人特別税 


法人の所得金額や所在地によって異なりますが実効税率は約21.5%~約39%です。

個人の所得税率は最大で45%、サラリーマンの場合には不動産の収入と給与所得が合算されるため税率が高くなりがちです。

課税される所得の個人と法人との税率の比較で法人化を検討します。
家賃収入が大きくなっても、経費がたくさん掛かって利益の出ない物件ならば、法人化をする意味はありません。



○個人での投資と比較した法人のメリット・デメリット



【法人化のメリット】


・所得の分散

個人事業主は自分に給与を支払うことができないため、収入がそのまま所得になります。

法人は社長に給与を支払うことができます。
法人側では社長に払った給与が損金扱いとなり税金が少なくでき、法人から給与を受けた社長は、給与所得控除が使えるため課税所得が下がるというポイントで課税所得を減らし節税することができます。

家族を法人の役員にして給与を払うこともできます。
個人事業主が専従者に給与を払う場合と比べて制限が少ないため、所得を分散しやすくなります。


・多様な税金対策

➀法人向け生命保険の活用

法人向けの生命保険を活用することで保険料の一部または全部を経費として計上することができます。

税務上のメリットだけでなく返戻金を修繕積立金として利用するなど、経営面での選択肢が増えます。


②中小企業倒産防止共済の活用

取引先が倒産したときに連鎖的に倒産や経営難にならないように資金の手当てをしてもらえる制度です。

加入資格を満たせば不動産賃貸業でも加入できます。

掛金の上限は800万円。
掛金月額は5,000円から20万円までの範囲で選択することができます。

掛金は全額経費計上が可能です。
ただし、中小企業倒産防止共済への掛金の支払いで、必要経費に算入することが出来るのは事業所得のみです。
不動産所得では掛金を必要経費とすることができません。

解約する場合、40か月以上の納付月数があれば100%の返戻率でお金が戻ってきます。
戻ってくるお金は、事業所得の収入金額として課税されます。
同じ年度に大規模修繕で使うなど課税されないように対策が必要です。


【法人化のデメリット】


・コスト

会社を設立するためにはコストがかかります。
合同会社を自分で作ったとしても登録免許税が6万円かかります。
会社を作るコストは最低でも6万円必要です。

素人が法人税申告書作成を行うことは難しいので、税理士に業務を依頼することになります。

作業は個人よりも煩雑なため税理士の報酬は個人と比べて高額になります。


・手間

複式簿記での記帳を行い、法人税等の申告を行うなど事務の手間が増えます。

・税務・経費の扱いが難しい(税の取扱いの違い)

所得税では交際費等の経費は業務上必要であれば、その損金算入額に限度はありません。

法人税では一部の金額が損金不算入になる可能性があり判断が難しいため、税理士に依頼する必要があります。

・社会保険料の増加

法人及び、5人以上の従業員がいる個人事業主は一部の例外を除いて社会保険に加入する義務があります。

将来、年金をもらえる、もらえないという議論を抜きにすれば、国民年金よりも厚生年金の方がもらえる年金額が高くなりますから、保険料の会社負担がキャッシュフローに与える影響は大きくなります。(社会保険料は給与金額の約30%)

・ 赤字でも税金がかかる

会社を設立すると赤字でも地方税が最低でも年7万円かかります。


法人化を検討する時には個人と法人どちらが税制面でメリットがあるのか、法人にかかるコストとのバランスを考えて判断して下さい。

おかしな融資スキームのためではなく不動産賃貸業を経営するうえで、個人事業主と法人どちらがメリットがあるのか、現状を税理士等に相談してから法人化を検討されてはいかがでしょうか。


2017年10月10日火曜日

不動産投資をする目的はなんですか?

不動産投資だけでなく、さまざまな投資に言えることですが、「投資」は目的達成のための手段でしかありません。

本来は目的を明確にして目的を達成するための計画を立てたうえで投資方針を決める(物件や融資の利用など)のが正しいのですが、フルローンが組めるとか有名な投資家が勧めているなどの目的を達成することと別の方向で投資を進めてしまう人がいます。

目的を持たない人たちは不動産投資をすることが目的になってしまい、なんのために投資をするのか明確な投資目的を持たずに不動産投資をしてしまいます。

目的達成のためでなく自分が買える物件に投資をしてしまうので、投資をしたあとで「こんな予定ではなかった」という事になってしまいます。
目的を見失うということは投資の失敗につながる可能性が高いのです。

今回は不動産投資の目的について書こうと思います。





○不動産投資をする目的の代表例





健美家が実施している「不動産投資に関する意識調査」によると
不動産投資を通して描いている目標のベスト5は

1位 働けなくなっても困らないようにする 50.4%
2位 老後の資金・生活費をためる 46.1%
3位 セミリタイアして好きなことをして暮らす 32.5%
4位 今の給与にプラスアルファの余裕を持たせる 27.4%
5位 家族にお金を残す  20.8%       (複数回答可)

こんな結果になっています。

3位のセミリタイア以外は将来の生活のため、現状の生活を豊かにするための資産形成が目的です。





○自分に目的に合った投資をすることが大切




上記のような多様な目的があるにもかかわらず『不動産投資は自己資金を使わず、金融機関から「フルローン」を引き出せば成功だ。』という風潮があります。

ただ物件だけを増やすのなら、それでもいいでしょう。
しかし、不動産投資を始めた時には目的があったはずです。

投資目的をはっきりさせると、保有期間のめどが決まります。
一般的には運用期間が長いほどリスクをとることができますので、保有期間のめどが決まればリスク許容度を考えることができ、それによって効率的な投資の計画が可能になります。

リスク許容度が違うのですから投資の計画もいろいろとあるはずです。
しかし、「自己資金を使わず、金融機関から「フルローン」を引き出せば成功だ。」という風潮のせいでみんなが資産拡大を目指してしまっています。

働き続けながら将来に備えるといった堅実な理由でスタートする人が多いのですが、堅実だった目的はいつからか、ただ物件を増やすことに変わってしまいがちです。

目的によっては数億規模で投資をする必要はなく、リスクを背負ってまで資産拡大を目指す必要はないのです。


どんな目的であってもお金に困らない生活を送りたいという根幹は変わらないだろうと思います。

そのためにはどんな資産運用が必要かもう一度、考えてみてください。


この記事が参考になりましたら、 下の2つのバナーをそれぞれ1クリックお願いします。

住宅ローン・アパートローン 金利上昇リスクはどの程度?

住宅ローンやアパートローンの返済シミュレーションの時に金利上昇のリスクを検討することがあります。 ここ数年間の日本では日銀の政策の影響もあり、低金利の状態が続いています。 未来のことは誰にも分からないので、変動幅を予想してみるということになります。 住宅ローンやアパー...