2017年7月31日月曜日

買ったら債務超過? 失敗者続出の新築マンション投資①

先日取り上げた週刊ダイヤモンドの不動産投資特集にも危険な投資として新築マンション投資がとりあげられています。

新築区分マンション投資には、1棟マンション投資や中古マンション投資とも共通のリスクが含まれていますので、どんな危険があるのか説明したいと思います。



○購入の目的は節税?、保険・年金の代わり?、投資?



新築マンションに投資をした人は節税のため、生命保険の代わりに、将来の年金の足しになどの理由で購入しています。

1棟ものの物件を勧める人の多くが絶対に買ってはいけないと言う新築マンション投資ですが、購入目的にあっているのなら購入してもいいのだろうと思います。




目的①節税のため



不動産に投資をして節税ができるのは「所得税・住民税」と「相続税」があります。


・所得税、住民税節税の仕組み


不動産投資で得られる家賃収入(不動産所得)は他の所得と合算されて税金が計算されます。
不動産所得は家賃収入から経費を控除した金額です。

経費は出て行ったお金ですが不動産投資では実際には支出をしていない減価償却費というみなしの経費が計上できます。

例えば建物価格が1,500万円の新築RC造だとすると、概算で年間33万円が減価償却費でみなしの経費になります。

この33万円は建物の価値の目減りを経費として認めてくれているだけでお財布から出ていくお金ではありません。

支出していないお金が経費として計上できるので節税になるという考え方です。
所得税については経費計上ができるというだけで節税効果はそれほど高くありません。

新築マンションのデベロッパーが節税として提案するのは不動産所得を赤字にして給与所得を損益通算するものですが、普通に利益の出る物件なら初年度以外は赤字になりません。



・相続税節税の仕組み


1億円の現金と1億円で買った不動産では相続財産の評価上は価値が違います。
現金1億円は相続財産としての価値も1億円ですが、不動産は価格が下がります。

土地の価値は公示地価の80%程度の路線価で計算され、建物は実際の工事にかかる費用の半額くらいの固定資産税評価額で評価されます。

仮に土地建物が5,000万円ずつだとしたら土地は80%の4,000万円、建物は半額の2,500万円合計が6,500万円といった評価になります。
その不動産を他人に賃貸していればさらに評価が下がります。

この相続税評価の仕組みを利用して不動産を利用した相続の節税ができます。
マンションは一般的に高層階ほど価格が高くなりますが、税金の基準は売買の価格ほど低層階と高層階の差がつかないので高層階を購入するとより節税ができます。


目的② 生命保険の代わりに



一般的にはローンを利用して不動産を購入すると団体信用生命保険という保険に加入します。
金融機関によっては保険料が金利に含まれていることもあります。

ローンを組んだ人が亡くなった場合に団体信用生命保険がローンを返済してくれるため残された家族はローンの返済が終わった不動産を取得します。

生命保険は非課税枠があり、すぐに現金を受け取ることができるため少し性質が違いますが財産を残せるという点では同じ効果があります。

不動産ですから相続登記が必要だということ、すぐに現金化できないということ、資産としての価値や生み出す収益(賃料)が年数が経過すると減少する点に注意しなければなりません。


目的③ 個人年金として



公的年金の持続可能性や給付水準に不安を感じて個人年金として不動産への投資をする人がいます。

ローンを完済してしまえば毎月の支払は管理費と修繕積立金だけになります。
家賃からコストを引いた残りのお金が年金の足しになります。

ただし、建物の築年数経過によって賃料が下がる可能性があること、賃借人がいなければコストだけがかかることが年金とは異なる点です

目的④ 投資として



純粋に投資として購入する人もいます。
家賃からコストとローン返済額を引いた残りのお金が利益になります。

新築なので10年程度はほとんど修繕費用はかかりません。
設備は最新のものが設置してありますので空室の募集時にも競争力があり、収益が安定しやすいというメリットがあります。



以上のように新築マンションでも購入目的を達せられればメリットがあり、購入そのものに問題はありません。


なぜ、失敗する人が続出してしまうのか?
次回、説明します。



2017年7月20日木曜日

積算評価の高い物件の探し方

金融機関の評価が出やすいと言われる積算評価の高い物件を探している人はたくさんいると思います。

しかし、市場には収益性が高く、地価の高い都市部では、積算評価の高い物件はそれほど多くありません。

積算評価の高い物件を探すにはどうすればでいいのでしょうか。



〇収益還元評価と積算評価の違い



収益還元評価は不動産の収益性に着目して、その不動産から将来得られるべき価値を評価します。
そのため、不動産が持つ収益力がそのまま評価額に反映されます。

積算評価というのは大まかに言うと土地価格+建物価格で不動産の価値を評価する査定方法です。
対象不動産を価格時点において再調達することを想定した価格を査定できます。

積算評価はコストを反映したものです。
かかったコストの評価であってマーケットでの評価は別です。

投資用不動産についてはコスト的評価とマーケット的評価が乖離する傾向が強いので、投資用不動産の価格査定には収益還元法を使うのが一般的です。


〇金融機関の収益物件の評価方法



金融機関が物件の担保評価を査定する場合、積算評価を採用する金融機関が多いため、積算評価を重視して物件を探す人がたくさんいます。

収益還元評価で担保評価をする金融機関もあるのですがそれほど多くはありません。

最近は金融庁から「アパートローンの物件評価は運営リスクを考慮して収益還元法を使いなさい」と指導されているので、今後は収益還元評価を採用する金融機関が増えるかもしれませんが、現在の主流は積算評価です。



〇融資に有利? 積算評価の高い物件を探すポイント



➀収益性の低い物件を探す


すごく端的に言えば収益性の低い収益物件を探すことが積算評価の高い物件を探す方法です。

投資用不動産は販売価格を収益還元法で算出するのが一般的です。
賃料を利回りで割って価格を算出します。

所在地や築年数、構造などの条件が同じなら割り戻す利回りは同じ値になります。
収益性(賃料)が高い物件ほど価格が高く、収益性が低い物件は価格が安くなります。

極端な例だと土地100坪のアパートと土地30坪のアパート土地の広さが3倍でも、家賃が同じで成約利回りが同じなら販売価格は同じ金額になります。

実務的には土地が広ければ販売価格の調整をしますが、土地が3倍でも利回りが1/3にはなりません。

この収益還元法と原価法の算出価格の違いに着目して物件を探すと積算評価の高い物件が見つかります。

実際に売られている物件では敷地内駐車場付きの物件や高層の建物が建たない低層住居専用地域など土地の広さに対して賃料が安い物件は積算評価が高くなる傾向があります。


②地方の物件は積算評価が高い可能性がある



首都圏と地方では家賃相場に大きな差があります。

月収100万円のマンションを例にします。
都心部なら1Kタイプ15部屋くらいで100万円くらいの賃料になりますが、家賃の安い地方なら同じ1Kでその倍の30部屋くらいの部屋数がないと月額100万円の賃料にはならない場合があります。

部屋数が倍になれば建物面積は当然倍以上になります。
建物面積が倍になれば、その大きさの建物が建つ広い土地が必要になります。

積算評価は土地建物の原価です。
土地には1㎡あたりの単価に差があるので都市と地方で大きな差はつかないかもしれません。

計算上、都心部も地方も建築単価(再調達価格)に差はありません。
地方の大きな建物は積算評価を高くします。


➀収益性の低い物件
②土地建物の大きい地方物件

この条件で物件を探すと積算評価が高い物件は探しやすいでしょう。
しかし、積算評価が高い物件=良い物件とも言えないので注意が必要です。



○積算評価が高い物件でもいいことばかりではない




➀「積算評価が高い=融資に有利」は大きな間違い



積算価格が高ければ次の物件が買いやすくなるというわけではありません。
金融機関の評価はさまざまです。
積算評価が全てではありません。

たとえ積算評価の高い物件を持っていても、積算評価で査定をする金融機関Aでは担保余力があると査定され、収益還元評価の金融機関Bでは債務超過と査定をされる可能性があるということです。


最近、金融庁では収益還元評価を推奨し金融機関の監視を強めています。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb160324.pdf

今は積算評価が主流でも数年後には収益還元評価を採用する銀行が増えるかもしれません。


②積算評価の高い物件はコストが高い


積算評価が高い物件は不動産取得税や固定資産税も高くなるので、収益的にはデメリットと言えます。

建物の規模の影響で積算評価が高くなっている物件は建物が大きい分、修繕費用が高くなります。

先ほどの月額賃料100万円のマンションの例で考えると1K×15部屋と1K×30部屋では賃借人が全て入れ替わると単純計算では原状回復費用は2倍かかるということになります。

共用部分の修繕を考慮すれば同じ家賃を得るために倍の以上の修繕費を払うことになります。


③建物の比重が高い物件は売却時の税金に注意


利益確定のために収益物件を売却することは不動産賃貸業を継続するうえで重要な仕事のひとつです。

建物の比重が高い物件は売却時に多額の税金がかかる場合があるので気を付けなければなりません。

売却時の所得税は売却の結果、儲かったら払う仕組みです。
売れた金額‐(売却経費+取得費)=儲かった金額ですが、この取得費は購入金額とイコールではありません。
建物の部分は減価償却されます。

建物の比率の高い物件は減価償却により売却時に取得費が小さくなり、儲かった金額が高くなる可能性があり、税金が高くなります。



○積算評価の考え方は投資戦略や目標によって判断が分かれる




投資用不動産の価値は積算評価ではなく収益力です。
収益のために投資をするのですから当然です。

融資を利用しない人、収益還元評価を採用している金融機関の融資を利用する人には積算評価が高くても嬉しくないのです。
理由は上記の通りコストが高く収益に悪影響だからです。

しかし、担保として積算評価を重視している金融機関もあります。
取引をする金融機関によっては積算評価は無視できません。

まずは自分の利用する金融機関が物件の何を重視しているのか知らなければなりません。

どういう投資戦略で進んでいくかによって積算評価の考え方は変わってきます。
不動産賃貸業は長期間の物件の運営で利益を出していくものですから積算評価重視だけではなく、状況や投資の目標に応じて適切な投資計画を考えて、物件や融資先を決めていくことが大切です。



2017年7月6日木曜日

「不動産投資の甘い罠」

少し前の話になりますが、6月24日号の週刊ダイヤモンドが「相続・副業の欲望につけこむ 不動産投資の甘い罠」という特集を掲載しました。

雑誌なので大げさに書いてある部分はたくさんあると思いますが、複数の業者の資料を入手して検証するなど非常に興味深い内容でした。

セミナーや不動産投資の本では良いことだけしか教えてもらえないですから、たまにはこんな内容の本を読んでみるのも良いのだと思います。


今回は週刊ダイヤモンドの特集「相続・副業の欲望につけこむ 不動産投資の甘い罠」について取り上げてみたいと思います。



①相続税対策としての不動産投資



相続税対策としてローンを利用してアパートを建設することは有効な手段のひとつです。

アパート建設による相続税対策が有効となるにはいくつかの前提条件があります。

多額の現金を持っている場合や自宅以外に土地を持っている場合には賃貸需要が見込める立地条件で収支が合うなら検討しても良いでしょう。

週刊ダイヤモンドでは以下の問題点をあげています。

・リスクを負う相続税対策が必要のない人のアパート建設・35年一括借り上げ(サブリース)のトラブル

サブリースのトラブルについてはこちらの記事をご覧ください。
「サブリースのトラブル 原因と対処法」
http://fp-s-fudousan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_25.html


②副業としての不動産投資



「受け取れる年金が減るのでは?」など将来への不安から、不動産投資をする人が増えています。

セミナーや不動産投資の本の影響で不動産投資の規模を拡大してセミリタイアを目指している人もいるかもしれません。


週刊ダイヤモンドは副業としての不動産投資の問題点として以下の3点をあげています。

・家賃が下がらない前提でのシミュレーションによる投資判断・赤字収支の不動産投資・返済比率の高い融資


〇不動産投資は甘い罠だらけ?



いろいろと問題点があがりましたが資産運用としての不動産投資は正しく行えば決してリスクの高いものではありません。

物件を購入した後の運営について事前にリスクを考えておけば、破綻をするようなことは少ないのです。

セミナーや不動産投資の本では教えてもらえないのかもしれませんが、利回り10%のRC造の物件をフルローンで5棟買ったら人生全てうまくいくわけではありません。

どんな物件でも建物が古くなれば家賃は下がります。
立地条件によって下落率に差はあると思いますが、全く下がらないということはありません。

建物は古くなれば修繕をする必要があります。
設備の更新も必要です。
修繕をしなければ家賃の下落率が上がってしまいます。

工事には費用がかかるのでその費用は賃料から積み立てておかなければなりません。

収益不動産は保有してから経営がスタートします。
シミュレーションの段階から家賃の下落や修繕費用を試算してあれば、このリスクは事前に準備ができます。

投資に失敗している人の多くはシミュレーションの甘さに原因があります。
単年や10年分くらいのシミュレーションしかしていなかったり見通しが楽観的だったり、なぜか節税分が収支に入っていたり。

きちんと家賃下落や修繕費、金利上昇などのストレスをかけたシミュレーションをしてあれば赤字収支の不動産投資や高い返済比率の不動産投資は実行する意味がないことが分かると思います。


私はいつも不動産投資は想像しているほどは儲からないと伝えています。

「甘い罠」に引っかからないためにも冷静にシミュレーションをして投資判断をしてください。


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