2017年12月26日火曜日

2017年の投資用不動産市場を振り返る

2017年もあと5日となりました。
不動産に投資をした人、他の資産に投資をした人、利益確定のために資産を売却した人、何もしなかった人、いろいろな行動をした人がいると思います。


今回は2017年の不動産市況を振り返ってみようと思います。



〇地価の上昇が継続



公示地価・路線価ともに上昇傾向が続きました。
下落幅の小さくなっていた住宅地の地価は、わずかながらプラスに転じ、全体として堅調に推移しています。

低金利でお金を借りやすい環境が、地価上昇の要因のひとつとされています。

全体が堅調な一方で下落が続いている地点もあります。
通勤や買い物に便利な駅から徒歩圏内の地価が上がり、駅から離れた不便な場所の地価は下がるという二極化が全国的に広がっているようです。


〇投資用不動産市場は?



不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」は毎月、全国の収益物件のデータを集計し、最新の市場傾向として発表しています。

建美家の調査によると2017年の投資用不動産の利回りはほぼ横ばい状態でした。


2017年不動産利回り


投資用不動産の利回りは2013年以降下がり続けていましたので、この1年間で投資用不動産の価格上昇は一服したと考えられます。


〇金融機関の融資が厳しくなった



建美家の不動産投資家へのアンケートによると、「金融機関の融資が厳しくなった」と感じている人が半数を超えました。

不動産投資家 金融機関の融資姿勢


リーマンショック後の富裕層や高属性者以外は不動産投資ができない時期と比べれば、融資は利用はやすい状態が続いていますが、安定した収入があれば、だれにでも貸してくれるほど緩くなくなったように感じます。


金融庁がアパート融資を警戒しているという報道が散々されていましたが、日銀が公表した10月の「金融システムレポート」でも新規実⾏ベースでは、個人による貸家業向けが前年比マイナスに転じているほか、個人の資産管理会社や地場の不動産業者を含む中⼩企業向けの伸び率も急速に低下していると記載があり、融資が厳しくなっていることが分かります。


日銀のレポートには「これまでの不動産市況の上昇傾向に変化が窺われつつあることや
⼀部地域で賃貸住宅の空室率の上昇が続いていることも踏まえると、⼊⼝審査や中間管理などの⾼度化を通じて、信⽤リスク管理の実効性をこれまで以上に⾼める必要がある。」としています。


一定の資産がなければ融資が受けられないという状況になりつつありますが、今までが簡単に融資が受けれられただけで、本来の審査状況に戻ったと言えるかもしれません。


国交省は低金利でお金を借りやすい環境が、地価上昇の要因のひとつと指摘しています。

今回の融資引き締めにより「不動産取引が減少し需要減による価格下落」が起きるのか?

不動産を買う人も売る人も2018年は金融機関や金融庁の動向に注目して、行動してください。

2017年12月13日水曜日

「不動産投資本」出版の仕組み

不動産投資本


東京ではたくさんの不動産投資のセミナーが開催されています。
セミナー出席者には主催者や講師が書いた本がプレゼントされることがあります。

メールマガジンの読者になるだけでその会社の社長が書いた本のPDF版がプレゼントされたり、不動産投資本はいろいろな方法で無料でもらえます。

○冊買ってくれた人には○○が特典としてついてくるなどの広告も見かけます。

アマゾンで不動産投資のカテゴリーで本を探すと、500以上の本が売っていて、2017年に出版された本だけでも100以上の不動産投資本があります。

不動産投資本の出版ラッシュには、出版者側が仕掛けている仕組みに原因があります。



この記事では、不動産投資本が出版されるシステムと情報選択の重要性ついてお話しします。



ー目次ー

1.不動産投資本の大半は広告
2.不動産投資本の情報は冷静に分析して取捨選択する
ー金持ち父さん 貧乏父さんはアメリカの話
3.大切なことは情報の分析
ー冷静な情報分析が不動産で失敗しないためには大切



1.不動産投資本の大半は広告


広告


私にも定期的にいろいろな出版社から、不動産投資本出版の勧めの連絡がきます。
私がブログで行っている情報提供がすばらしい・・・からではなく、「出版でブランディングしませんか?」という営業です。

数百万円の費用負担で単行本の出版ができて、費用によっては本屋さんの平積みの目立つポジションに本を置いてもらえるそうです。

数百万円をかけて企業や個人が本を出すのはブランディングのためであることが多く、出版という信用力を利用した広告としての効果を狙ったものです。

広告チラシに書いてあることは広告としてフィルターをかけて読まれます。
本に書いてあることは広告フィルターを外した状態で読まれる場合が多く、本を出版できるだけの実績がある専門家であると思わせることもできます。

「○冊買ってくれた人には○○をプレゼント」などの企画は、広告費の回収のために行われている可能性が高いです。

販売されている全ての本が広告ではありませんが、大半は広告と考えて良いと思います。



2.不動産投資本の情報は冷静に分析して取捨選択する


アメリカ



不動産投資本=広告と考えれば、内容を冷静に考えられると思います。
自分の会社や事業を宣伝したいのですから魅力的なことがたくさん書いてあります。

例えば、有名な『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ氏著)も、著者はアメリカ人でアメリカの話だということを差し引いて読まなければ、日本の不動産投資に活かせる正しい情報にはなりません。

この本にはたくさんの有益な情報や投資への考え方が書かれていますが、実例は「アメリカでアメリカ人に起きたこと」ということを前提として、情報をとらえる必要があります。

アメリカは中古住宅の取引が活発で建物が古くてもメンテナンスが良ければ、建物の築年数が古くても建物に価格がつきます。

メンテナンス状況は関係なく20年で木造建物はゼロ評価の日本とは違います。

税制面でもアメリカは決まったメンテナンスが行われた住宅は法定耐用年数がリセットされます。

日本ではメンテナンス状況に関係なく、耐用年数が経過した住宅の耐用年数は、法定耐用年数の20%となります。

アメリカではノンリコースローンが主流です。
ノンリコースローン(non-recourse loans)とは、対象物件の事業収益または事業資産の範囲に債務履行が限定された融資のことです。

借手は対象物件の事業以外の資産を処分してまで、債務の返済を求められることはありません。その分、金利は高くなります。

日本では一部の不動産証券化市場におけるSPCに対して、ノンリコースローンによる融資が行われているようですが、一般の投資家向けには行われていないようです。

アメリカと日本では事業が失敗した場合のイメージにも差があります。
ドナルド・トランプ氏はカジノ・リゾート事業を経営する会社を破産させた経験があります。
しかし、今はアメリカ合衆国大統領です。

制度の違いはありますが、日本では破産したことが公になっている人が、総理大臣になる可能性は相当に低いのではないでしょうか。

住宅の流通、融資制度、社会環境など、日本とアメリカでは少し調べるだけでもこれだけの違いがあります。

『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んで参考にするとしても、上記の日本とアメリカの違いなどから、本に書いてある情報の取捨選択が必要になります。

日本の不動産会社(有名な投資家)が広告目的で書いている本ならば、なおさら取捨選択が重要になります。


3.大切なことは情報の分析


情報の分析と成功



不動産投資本が広告やブランディングが目的なものと考えれば、内容を吟味する必要性があることは明らかです。

不動産会社なら顧客獲得や囲い込みが目的でしょう。
最近は無理な投資でお金に困った有名投資家が本を広告にして、(メルマガ登録で著書をプレゼントなど)多額の授業料がかかる不動産投資塾に勧誘をしていたりします。

不動産を扱う仕事をしていると、この人は「不動産業者にだまされたな」と感じることが多々あります。
※最近はだます側に不動産コンサルタントや有名大家さんの投資塾などが加わり、とてもカオスな状態になっています。

「だまされた」というのは噓をつかれたのではなく、必要なことを伝えられていない(大切なことを隠されている)ことのほうが多いように感じます。

これから起きる可能性のある運営上のリスクや売却時の見通しなど、聞かないと教えてくれないことはたくさんあります。

本やセミナー、知人からのアドバイスなど、情報を得る機会はたくさんあると思います。

情報を得た時にはフラットな視点でその情報を分析してください。
絶対に鵜吞みにしてはいけません。
自分にとって有利だったり自分の意見と同じことが必ず有益とは限りません。

冷静な情報分析が不動産で失敗しないためには大切です。


2017年10月30日月曜日

収益物件売却時の税金 

収益物件の情報サイト「建美家」によると金融機関の融資状況が厳しくなったと感じる人が増えていて、高騰した収益物件価格も調整局面が近いと言われ始めています。

このような市況の影響もあり、収益物件の価格が高騰しているうちに利益確定のために収益物件を売却する人が増えています。

リーマンショック後に収益物件を購入した人は利益が出ていることもあるので、税金について確認しておかないと思わぬ支出で、こんなはずじゃなかったということになってしまうこともあります。

今回は収益物件を売却した時にかかる税金について取り上げます。



〇個人が所有している収益物件を売却した場合




賃貸マンションのような収益物件を売却した場合も、居住用不動産の売却と同じく譲渡所得(売却益)に対して所得税・住民税が課されます。

譲渡損失(売却損)が発生する場合は、所得税・住民税は課税されません。

その譲渡損失は、同年中に売却した他の不動産の譲渡益と損益通算することは可能ですが、給与所得などの他の所得と損益通算することはできません。

個人が土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して計算することになっています。


➀収益不動産を売却した場合の税金の計算方法



■譲渡所得の計算式  
譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費※1 + 譲渡費用※2)

上記の計算の結果、譲渡所得がプラスになれば、譲渡益になります。
つまり売却によって、「いくら儲かったのか」に対して課税されます。
売却の結果がマイナスになれば、譲渡損となり課税されません。

※1 取得費
売った土地や建物の購入代金(建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いた金額)
→1年間の減価償却費の計算方法(定額法の場合):取得価額 × 定額法の償却率

購入金額が不明な場合には売買価格の5%を取得費とみなします。
(相続の場合は取得費を引継ぎ)

他には取得のために支出した立退料・測量費・造成費用などのうち、必要経費に算入されていないものを含みます。

減価償却されていたり、経費計上したものは2重に計上することはできないので、取得費とすることはできません。

建物代金を高く設定した人は建物価格が減価償却されているため、取得費が少なくなる可能性があるので、売却の時に譲渡所得税が高額になることがあります。

※2 譲渡費用
売却に要した費用を指します。
具体的には仲介手数料・司法書士費用・測量費・売買契約書の印紙代・立退料、などがあります。


■税額の計算式    
税額 = 譲渡所得 × 税率(所得税・住民税)

〈税率〉
短期(譲渡の年の1月1日で5年以下)  39.63%(所得税30% 住民税9%)
長期(譲渡の年の1月1日で5年超)   20.315%(所得税15% 住民税5%)


②計算例


・平成24年9月1日に購入したアパートを売却した場合の計算例

売却した日 平成29年10月1日
売却価格 5,000万円
購入時の物件価格 6,000万円 内訳:土地3,000万円・建物3,000万円
購入時の経費は運営時に経費計上済み、建物は2,000万円減価償却済み
譲渡費用 200万円

譲渡所得の計算
売却価格5,000万円 -(取得費:4,000万円 + 譲渡費用:200万円)=800万円
取得費は購入価格6,000万円 - 減価償却済みの建物価格2,000万円
譲渡所得 800万円×39.63%=317万400円


平成24年9月1日に購入した不動産を平成29年10月1日に譲渡した場合、カレンダー上は5年を超えても、譲渡した年の1月1日(平成29年の1月1日)で5年を超えなければ、長期譲渡所得となりません。
平成30年1月1日以降に譲渡した場合に長期譲渡所得となります。



〇法人が所有する収益物件を売却した場合




法人が所有する収益物件を売却した場合、利益が出ても損失が出ても、他の所得(売上など)と合算します。

不動産の売却益が分離課税される個人との違いです。
法人は他の所得と合算して法人税率をかけて税額を求めます。

法人税率は売上や資本金によって異なります。

個人の場合、所有期間によって長期短期の税率がありましたが、法人には所有期間は関係ありません。

〈計算方法〉
利益 = 売却額 -(売却した土地建物の簿価 + 譲渡費用)
税額 = (利益 + 他の所得) × 法人税率




個人法人ともに平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合には、1,000万円の特別控除(法人の場合は損金の額に算入)を受けることがあります。
※控除を受けるには一定の条件があります。


アパートの売却時には「税金」と「経費」かかります。
売却をしてから「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、事前に売却時にかかる税金、経費を確認しておいてください。
なお、具体的な税額計算は税理士にご相談ください。


2017年10月23日月曜日

不動産投資は法人と個人どちらでするべき?

1物件1法人のスキームが流行してしまったせいか規模の大小にかかわらず、法人での不動産投資を希望する方が増えています。

今回は危ないスキームなど融資の話は別にして法人・個人での不動産投資について、税制面などのメリット・デメリットの比較をしてみようと思います。



○個人と法人の税率の違い



・個人が支払う税金

➀所得税 (課税所得金額×税率-課税控除額)
※国税庁タックスアンサーより転載







②住民税 (課税所得金額×10%+5000円) ※東京都の場合
③個人事業税 (課税所得金額-290万円)×税率


・法人が支払う税金

➀法人税  
②地方法人税
③住民税 
④事業税 
⑤地方法人特別税 


法人の所得金額や所在地によって異なりますが実効税率は約21.5%~約39%です。

個人の所得税率は最大で45%、サラリーマンの場合には不動産の収入と給与所得が合算されるため税率が高くなりがちです。

課税される所得の個人と法人との税率の比較で法人化を検討します。
家賃収入が大きくなっても、経費がたくさん掛かって利益の出ない物件ならば、法人化をする意味はありません。



○個人での投資と比較した法人のメリット・デメリット



【法人化のメリット】


・所得の分散

個人事業主は自分に給与を支払うことができないため、収入がそのまま所得になります。

法人は社長に給与を支払うことができます。
法人側では社長に払った給与が損金扱いとなり税金が少なくでき、法人から給与を受けた社長は、給与所得控除が使えるため課税所得が下がるというポイントで課税所得を減らし節税することができます。

家族を法人の役員にして給与を払うこともできます。
個人事業主が専従者に給与を払う場合と比べて制限が少ないため、所得を分散しやすくなります。


・多様な税金対策

➀法人向け生命保険の活用

法人向けの生命保険を活用することで保険料の一部または全部を経費として計上することができます。

税務上のメリットだけでなく返戻金を修繕積立金として利用するなど、経営面での選択肢が増えます。


②中小企業倒産防止共済の活用

取引先が倒産したときに連鎖的に倒産や経営難にならないように資金の手当てをしてもらえる制度です。

加入資格を満たせば不動産賃貸業でも加入できます。

掛金の上限は800万円。
掛金月額は5,000円から20万円までの範囲で選択することができます。

掛金は全額経費計上が可能です。
ただし、中小企業倒産防止共済への掛金の支払いで、必要経費に算入することが出来るのは事業所得のみです。
不動産所得では掛金を必要経費とすることができません。

解約する場合、40か月以上の納付月数があれば100%の返戻率でお金が戻ってきます。
戻ってくるお金は、事業所得の収入金額として課税されます。
同じ年度に大規模修繕で使うなど課税されないように対策が必要です。


【法人化のデメリット】


・コスト

会社を設立するためにはコストがかかります。
合同会社を自分で作ったとしても登録免許税が6万円かかります。
会社を作るコストは最低でも6万円必要です。

素人が法人税申告書作成を行うことは難しいので、税理士に業務を依頼することになります。

作業は個人よりも煩雑なため税理士の報酬は個人と比べて高額になります。


・手間

複式簿記での記帳を行い、法人税等の申告を行うなど事務の手間が増えます。

・税務・経費の扱いが難しい(税の取扱いの違い)

所得税では交際費等の経費は業務上必要であれば、その損金算入額に限度はありません。

法人税では一部の金額が損金不算入になる可能性があり判断が難しいため、税理士に依頼する必要があります。

・社会保険料の増加

法人及び、5人以上の従業員がいる個人事業主は一部の例外を除いて社会保険に加入する義務があります。

将来、年金をもらえる、もらえないという議論を抜きにすれば、国民年金よりも厚生年金の方がもらえる年金額が高くなりますから、保険料の会社負担がキャッシュフローに与える影響は大きくなります。(社会保険料は給与金額の約30%)

・ 赤字でも税金がかかる

会社を設立すると赤字でも地方税が最低でも年7万円かかります。


法人化を検討する時には個人と法人どちらが税制面でメリットがあるのか、法人にかかるコストとのバランスを考えて判断して下さい。

おかしな融資スキームのためではなく不動産賃貸業を経営するうえで、個人事業主と法人どちらがメリットがあるのか、現状を税理士等に相談してから法人化を検討されてはいかがでしょうか。


2017年10月10日火曜日

不動産投資をする目的はなんですか?

不動産投資だけでなく、さまざまな投資に言えることですが、「投資」は目的達成のための手段でしかありません。

本来は目的を明確にして目的を達成するための計画を立てたうえで投資方針を決める(物件や融資の利用など)のが正しいのですが、フルローンが組めるとか有名な投資家が勧めているなどの目的を達成することと別の方向で投資を進めてしまう人がいます。

目的を持たない人たちは不動産投資をすることが目的になってしまい、なんのために投資をするのか明確な投資目的を持たずに不動産投資をしてしまいます。

目的達成のためでなく自分が買える物件に投資をしてしまうので、投資をしたあとで「こんな予定ではなかった」という事になってしまいます。
目的を見失うということは投資の失敗につながる可能性が高いのです。

今回は不動産投資をする目的について書こうと思います。





○不動産投資をする目的の代表例





健美家が実施している「不動産投資に関する意識調査」によると
不動産投資を通して描いている目標のベスト5は

1位 働けなくなっても困らないようにする 50.4%
2位 老後の資金・生活費をためる 46.1%
3位 セミリタイアして好きなことをして暮らす 32.5%
4位 今の給与にプラスアルファの余裕を持たせる 27.4%
5位 家族にお金を残す  20.8%       (複数回答可)

こんな結果になっています。

3位のセミリタイア以外は将来の生活のため、現状の生活を豊かにするための資産形成が目的です。





○自分に目的に合った投資をすることが大切




上記のような多様な目的があるにもかかわらず『不動産投資は自己資金を使わず、金融機関から「フルローン」を引き出せば成功だ。』という風潮があります。

ただ物件だけを増やすのなら、それでもいいでしょう。
しかし、不動産投資を始めた時には目的があったはずです。

投資目的をはっきりさせると、保有期間のめどが決まります。
一般的には運用期間が長いほどリスクをとることができますので、保有期間のめどが決まればリスク許容度を考えることができ、それによって効率的な投資の計画が可能になります。

リスク許容度が違うのですから投資の計画もいろいろとあるはずです。
しかし、「自己資金を使わず、金融機関から「フルローン」を引き出せば成功だ。」という風潮のせいでみんなが資産拡大を目指してしまっています。

働き続けながら将来に備えるといった堅実な理由でスタートする人が多いのですが、堅実だった目的はいつからか、ただ物件を増やすことに変わってしまいがちです。

目的によっては数億規模で投資をする必要はなく、リスクを背負ってまで資産拡大を目指す必要はないのです。


どんな目的であってもお金に困らない生活を送りたいという根幹は変わらないだろうと思います。

そのためにはどんな資産運用が必要かもう一度、考えてみてください。


2017年9月21日木曜日

アパート・マンション経営の支出

アパート経営の採算性を表す指標として「利回り」があります。
投資対象の不動産の価格とそこから得られる賃料収入との関係で表され、次のような2つの利回りがあります。


表面利回り(%)  =  年間の総収入÷総投資額×100
実質利回り(%)  = (年間の総収入-経費)÷総投資額×100

販売図面やネット広告などに書いてあるのは「表面利回り」です。

実質利回りは仲介会社などから前年の経費を確認したり、経費がこのくらいはかかるだろうという予測の基に計算をします。

この経費(アパート・マンション経営の支出)には、どのようなものがあるのでしょうか?




○1棟アパート・マンション経営の支出




①税金
固定資産税・都市計画税・不動産取得税※・登録免許税※・所得税・住民税など
※物件の取得年のみに必要

②損害保険料 
事業に要する火災保険・地震保険の掛け金で当年度分

③修繕費
建物、設備等の修理代金や原状回復費用など 

・大規模修繕
国交省のマンションの修繕積立金に関するガイドラインでは、15階未満、延べ床面積5,000㎡未満の建物の場合、1㎡あたり208円が目安としています。

これを目安に賃料の3~5%程度は住みたてておく必要があります。

・原状回復
入居期間や部屋の広さ、室内の状況によって異なります。

④ローン返済 
ローンを利用している場合

⑤地代・家賃 
借地の場合の賃料

⑥手数料 
不動産会社への入居者募集・契約更新に関する手数料など。

⑦委託管理費 
不動産会社へ支払う管理費など
入居者や家賃の集金などの賃貸管理は収入の5%程度が一般的。
その他に実費で清掃費用など

⑧各種点検費用(建物の規模・設置状況により異なる)
・消防点検(建物の規模により3~10万円程度)
・受水槽(水量によって3~10万円程度)
・エレベーター(月額2~5万円程度、契約形態により異なる)など。

⑨水道光熱費 
共用部分の水道料・電気料・ガス料など。

⑩広告宣伝費 
入居者募集広告に要した費用など
客付仲介会社への報酬化しており地域によって異なる。

賃貸需要の高い地域ではかからないこともあります。
賃貸需要の低い地域や競争の激しい地域では賃料の2~3ヶ月分が必要となる場合もあります。



○区分所有のマンション(1室)の支出



①税金
②損害保険料 
③管理費・修繕積立金
管理組合に支払う管理費・修繕積立金
区分所有のマンションは管理組合に支払うので
自分で積み立てる必要はありません。

④修繕費
専有部分の設備等の修理代金や原状回復費用など 

⑤ローン返済 
⑥地代・家賃 
⑦手数料 
⑧委託管理費 
⑨広告宣伝費 


○経費率は地域差に注意



シミュレーションをする時に家賃に対する経費の割合を一律で考えてしまう人がいます。

広告費は地域によって相場に差がありますし、建物の規模によっては各種点検費用が必要になる可能性もあります。

東京と地方の比較をすると同じ面積でも家賃は半分というのはよくあることです。
同じ面積なら同じ原状回復工事をすれば同じ費用がかかります。

物価の差などを考慮しても地方だから原状回復費用が半額ということはないでしょう。

例えば月額の賃料が50万円の同スペックの1Kタイプのアパートが東京と地方にあるとします。

東京の家賃が5万円だとしたら10室のアパートということになります。
家賃が半額だとすると地方都市の物件は20室のアパートです。

年間10%の入居者が入れ替わるとしたら東京のアパートは1室、地方のアパートは2室入居者の入れ替えがあります。

単純に原状回復や新規入居者の募集の経費は東京の倍かかることになります。
極端な例をあげましたが、地域の賃貸需要や入居者の属性などの実態にあった経費割合を選択する必要があります。



○アパート・マンション経営は投資ではなく事業




不動産投資はお金を投入して終了ではなく、購入後の運営で収支が大きく変わる事業的な面があります。

賃貸物件を所有した瞬間から不動産賃貸業という事業が始まります。

家賃収入が入ってくるので比較的安定していますが、事業の継続のためには物件の管理・修繕のための支出やトラブルが起きた時のリスク管理のための保険の支出があります。

予想外の設備の故障などのための資金の確保も必要となります。
この辺りは他の業種の事業と同じ部分があると思います。

ローンが組めるから、利回りが高いから、積算評価が高いからといった条件だけでなく、その物件の運営にはどのような費用が必要なのか必ず事前に確認をしてください。

副業や投資ではなく事業をするという意識をもって物件を購入することが、失敗を防ぐ手段になります。


2017年9月8日金曜日

不動産投資と情報リテラシー

8月31日のサッカー日本代表VSオーストラリア代表の試合で、日本代表のワールドカップ出場が決まりました。

翌日、ネットのスポーツニュースはサッカー日本代表の話題一色だったのですが、その中で面白い記事がありました。

「ハリルホジッチ監督を酷評する理由をスポーツ新聞記者に聞いてみた」
https://news.yahoo.co.jp/byline/murakamiashishi/20161013-00063201/

この記事は約1年前のものです。
おそらくネットニュースが関連記事として自動で拾ってきたものだと思います。

登場人物は匿名なので真偽のほどは分かりませんが、成績にかかわらず年中解任記事が出ていたのでなんとなく納得しまうような内容でした。


この記事の中に
「今は情報リテラシーが問われる時代だ。マスメディアが発信する記事の裏にはどういった事情があるのか、常に疑う姿勢が必要とも言える。自身の眼で正しく情報の取捨選択をしてほしい」という記載があります。

リテラシーというのは「適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する」という意味ですが、不動産投資や資産運用に関しても同じことが言えるのではないでしょうか。

今回は不動産投資と情報リテラシーについて考えてみました。



〇「複数法人を利用した融資スキーム」の論争



先月末から今月に不動産投資関連の話題でこんなことが起きていました。

元メガバンクの支店長で現在はTSネッツ代表取締役の菅井敏之さんがFacebookにこんな投稿をしました。
https://www.facebook.com/toshiyuki.sugai.7/posts/1470668099667660?pnref=story

「複数法人を利用した融資スキーム」への警告です。

菅井さんは以前から銀行を欺く融資手法に警鐘を鳴らしていました。
その活動で上記の投稿をされたわけですが、たくさんの反応があったようです。
https://www.facebook.com/toshiyuki.sugai.7/posts/1477494332318370?pnref=story


この複数法人スキームについては私もいくつかの金融機関の融資担当者とも話したことがありますが、どの金融機関も一括返済、実行前に発覚した場合には融資内定の取り消しという対応をするとのことですし、実際に対応した案件も数件あるそうです。

最近では審査の際に提出した情報に間違いがないという書面を提出させる金融機関もでてきています。

著者が誰か分かる本や実名で公開されているブログ・動画などでは推奨する人はいないスキームなので正攻法でないのは間違いないでしょう。


私がもともと「1棟1法人の融資スキーム」や「契約書の改ざんによるオーバーローン」には否定的な立場であることを差し引いても、菅井さんは正しい警告をしているように感じますが、「不動産投資仲間を陥れるな」とか「余計なことを言うな」というような反応もたくさんあるわけです。


〇情報の取捨選択は感情ではなくロジックで



この融資スキームの話題に限らず、不動産投資についてはたくさんの情報があり、情報の取捨選択がとても重要になっています。


不動産の相場に関することや賃貸の需給状況、金融機関に関することなど多様なソースから色々なものを見聞きして、その情報の価値を判断しなければなりません。

不動産投資のセミナーや投資本などでは良いことだけしか聞かせてもらえないことも多いですし、どうしても自分にとって都合の悪い情報は感情的に重要視できない気持ちもあると思います。

不動産投資のセミナーでは「素直な人が成功します」、「考えるよるまず行動」のような話がされることが多いようです。

とりあえず業者やコンサルタントの言うとおりにすばやく動いてくれる人が成功する投資家だということですが、銀行にばれないように借入金の存在を隠したり、見せ金を作るために通帳の偽造や偽の入金履歴を作るなどの行為を業者やコンサルタントの言うとおりにやりなさいということです。

違法性などを感じる時には、どんなに魅力的な提案であっても「それでも、違法な手法は選択しない」という判断が必要です。


不動産投資は正規の方法でも十分に利益を出せる可能性があります。
自分の身を守るためにはぜひ正攻法で進めていくようにしてください。



2017年8月25日金曜日

自己資金が戻ってくる? 消費税還付

今回は不動産投資の消費税還付についてお話します。


不動産投資のセミナーなどでは「1物件1法人」のスキームと共にとりあげられていることが多いので耳にしたことがあるかもしれません。

賃貸アパートやマンションなどを売却すると消費税が課税されます。
世の中の投資用不動産の建物部分には消費税が課税されているのです。(土地部分には消費税はかかりません)

建物価格が2,000万円だとしたら160万円の消費税が物件の価格に含まれています。

この160万円の消費税が一定の条件を満たせば戻ってくるというのが「消費税還付」です。



〇消費税が還付されるための条件は?



消費税は課税売上に含まれる消費税から仕入れや経費の支出に含めて支払った消費税を差し引いて、引ききれなかった金額があるときはその金額が還付されます。
消費税還付の手順は以下の通りです。


①消費税課税事業者選択届出書の提出
届出書の提出は物件取得前に行います。

②建物の購入(完成)月に消費税の非課税売上を発生させない
(=家賃を受け取らない。)
決済日を月末に設定し、日割家賃は受け取らないよう調整します。

③建物の購入(完成)月に消費税の課税売上を発生させる
自販機・物販・駐車場収入などの課税売上を発生させます。

④消費税の確定申告書(還付申請書)を提出する

⑤還付申告年を含めて3年間の課税売上割合の推移に注意しながら課税売上を計上し続ける


〇消費税還付は難しい



・一度還付された消費税を返還させられる「還付金返納」


消費税還付で一番面倒なのが「課税売上割合が著しく変動したときの調整」です。
これは消費税還付のためだけに一時的に課税売上を発生させて、還付を受けることを防ぐためのものです。

※課税売上割合とは課税売上/(課税売上+非課税売上)です。

➀還付を受けた初年度の課税売上割合を計算する
②還付を受けた年を含む3年間の通算課税売上割合(総売上3年分/課税売上3年分)を計算する
この➀②の変動率と変動差を数値化して変動率50%以上、かつ変動差5%以上となった場合、還付金は返納しなければならない。

課税売上を発生させるためには金の取引を行うことが多いようです。


・融資を受ける金融融機関によっては消費税還付ができない


金融機関によっては資産管理会社への融資の場合に不動産賃貸業専業とすることを条件とされる場合があります。

その場合には課税売上を発生させるための金の取引などの行為ができないため、消費税還付はできません。

・税務調査の対象になりやすい


租税回避行為とみなされやすい消費税還付は税務調査の対象となりやすくなります。
還付金が多ければ確実に税務調査がきます。



〇消費税還付やるかやらないか


・必ず税理士に頼む

課税売上のコントロールや申告書の作成、税務調査対策など難易度の高い部分があります。

報酬はそれなりに高いですが必ず消費税還付に詳しい税理士に依頼しましょう。


・面倒くさい

課税売上のコントロールのために不動産賃貸業以外の課税売上を発生させなければなりません。

定期的に金の取引などを行う必要があり、時間と手間がかかります。


・リスクがあることを認識する

➀失敗すれば還付された消費税は返納しなければなりません。

②課税売上を発生させるための金の取引は元本割れの可能性があります。
 金の取引業者への販売手数料の支払いなども発生することもあります。

③不動産の消費税還付は租税回避行為として次々と道を塞がれています。
抜け道はあっても税務署には目をつけられやすいため、今後の不動産賃貸業運営時に調査を受ける可能性もあります。



消費税還付をやるかやらないかは投資家個人の考え方次第ですが、気をつけてやらないと課税売上を発生させるための事業での損失や還付金返納など大きなダメージを受ける可能性があります。

くれぐれもご注意ください。

2017年8月9日水曜日

買ったら債務超過? 失敗者続出の新築マンション投資②

前回は新築マンションの投資目的についてとりあげ、目的にあっていれば新築マンションへの投資は間違っていないとお話ししました。

今回はどうして新築マンション投資は失敗者が続出してしまうのか、説明します。




〇投資目的に合っているか確認不足




前回、新築マンションに投資する目的を4つあげました。
➀節税のため ②生命保険の代わり ③個人年金として ④投資として

この目的にはあっているか判断が甘いために投資が失敗しているケースが多いのです。

判断の甘さは正しいシミュレーションができないことが原因です。


・新築物件の家賃は高い



当然のことですが、新築物件の家賃は割高です。
設備は最新で今までの誰も使っていない新品の設備に住むのですから、プレミアム家賃なのは仕方がないでしょう。

そのプレミアム家賃は間違いなく下がるということを考慮してシミュレーションをしなければなりません。

そのうえで個人年金や投資として成立するのか考えて投資をするか判断します。


・売却損が出やすい



新築マンションの価格は新築プレミアムの家賃で設定されています。
入居者が入れ替わった時に家賃が相場通りになれば、その部屋の価格はその時点で大きく値下がりします。

例えば1,920万円の新築物件を表面利回り5%で買ったとします。
家賃は8万円です。

4年後に入居者が入れ替わって家賃が7万円に下がったとしたら、同じ5%の利回りで売っても1,680万円です。


フルローンで購入しているなど融資の割合が多いと、家賃の値下がりによる収支の悪化に耐えられず売却をしようと考えます。

しかし、元利均等返済の場合、返済初期は利息返済の割合が高いため、残債はそれほど減っていないことが多く、売却損が出てしまうのです。


・節税効果は高くない



前回の記事でも取り上げたとおり所得税・住民税の節税効果は高くありません。
相続税という点では一定の効果がありますが、所得税・住民税の節税を期待しても融資の割合によっては節税のために赤字の物件を持ち続けることになります。

赤字になってしまった物件の節税効果は支払いを免れた税額と、節税効果のために補てんしたキャッシュフローの赤字部分と、どちらが多いかという判断になります。



〇資産規模の拡大が難しい




分譲マンションを投資目的で購入している人はたくさんいますが、ポートフォリオに新築で購入して収支が赤字のマンションがあると銀行から融資を受けられずに物件購入が続けられない人がいます。

不動産投資は不動産賃貸業です。
収支が赤字(数年後に赤字になりうる)の物件を持っている人には銀行はお金を貸しません。

銀行は不動産賃貸業という事業にお金を貸すのですから、利益の出ていない事業の拡大にお金は貸せないということです。

節税や生命保険の代わりなどいろいろな投資の目的がありますが、銀行は節税のために行う投資を事業とは認めません。

生命保険に加入していても融資の審査に影響はありませんが、生命保険の代わりにマンションを購入して返済をしているという論理は認めません。

節税は利益を減らすことによって行われます。
生命保険の代わりでも赤字のマンションは負債となります。

儲かっていない事業をしていると判断されてしまうので融資には不利になります。


○新築マンション投資で失敗しないために気をつけること



➀家賃が下がることを認識する。


家賃は必ず下がります。特に最初の入居者の退去後は下落幅も大きいです。


②フルローンは避ける


新築の物件は中古物件に比べてフルローンが組みやすいということもあり、提携ローンを利用して全額ローンで物件を買ってしまう人がいます。

当然ですが、新築物件は中古物件よりも利回りが低いです。
家賃が下がった時にフルローンを組んでいてローン返済額が多い人は収支が赤字になってしまうケースがよくみられます。


③購入前に楽観的なシミュレーションをしない



購入前に現実的な条件でシミュレーションをしましょう。
1年分ではなく保有予定期間分のシミュレーションです。

「家賃は築年数に応じて下がる」、「節税分を収益と考えない」、「修繕の費用を積み立てる」などの厳しいシミュレーションが大切です。


④キャッシュフローが赤字になったら損切りも覚悟する



現金購入や低返済比率なら問題ありませんが、融資の割合が多くキャッシュフローが赤字になってしまったら、手元の資金を投入してでも損切りをする覚悟が必要です。

赤字のまま保有を続けても下がった家賃が新築時の水準に回復する見込みはありません。

収入は増えないのですからローンの返済が終わるまでキャッシュフローの赤字は数年にわたって続きます。

赤字を作ることが目的でないのなら、繰り上げ返済でキャッシュフローを改善するか、売却して損切りを検討してください。

不動産賃貸業として事業を拡大したい人も収支が赤字の物件は処分をして出直しをお勧めします。





どの物件の種別でも同じですが、最終的には購入目的にあうかどうかです。
あくまで税金対策なのか、生命保険の代わりなのか、不動産賃貸業なのか。

購入前に購入目的にあわせたシミュレーションをして目的にあわせた物件を購入して下さい。




2017年7月31日月曜日

買ったら債務超過? 失敗者続出の新築マンション投資①

先日取り上げた週刊ダイヤモンドの不動産投資特集にも危険な投資として新築マンション投資がとりあげられています。

新築区分マンション投資には、1棟マンション投資や中古マンション投資とも共通のリスクが含まれていますので、どんな危険があるのか説明したいと思います。



○購入の目的は節税?、保険・年金の代わり?、投資?



新築マンションに投資をした人は節税のため、生命保険の代わりに、将来の年金の足しになどの理由で購入しています。

1棟ものの物件を勧める人の多くが絶対に買ってはいけないと言う新築マンション投資ですが、購入目的にあっているのなら購入してもいいのだろうと思います。




目的①節税のため



不動産に投資をして節税ができるのは「所得税・住民税」と「相続税」があります。


・所得税、住民税節税の仕組み


不動産投資で得られる家賃収入(不動産所得)は他の所得と合算されて税金が計算されます。
不動産所得は家賃収入から経費を控除した金額です。

経費は出て行ったお金ですが不動産投資では実際には支出をしていない減価償却費というみなしの経費が計上できます。

例えば建物価格が1,500万円の新築RC造だとすると、概算で年間33万円が減価償却費でみなしの経費になります。

この33万円は建物の価値の目減りを経費として認めてくれているだけでお財布から出ていくお金ではありません。

支出していないお金が経費として計上できるので節税になるという考え方です。
所得税については経費計上ができるというだけで節税効果はそれほど高くありません。

新築マンションのデベロッパーが節税として提案するのは不動産所得を赤字にして給与所得を損益通算するものですが、普通に利益の出る物件なら初年度以外は赤字になりません。



・相続税節税の仕組み


1億円の現金と1億円で買った不動産では相続財産の評価上は価値が違います。
現金1億円は相続財産としての価値も1億円ですが、不動産は価格が下がります。

土地の価値は公示地価の80%程度の路線価で計算され、建物は実際の工事にかかる費用の半額くらいの固定資産税評価額で評価されます。

仮に土地建物が5,000万円ずつだとしたら土地は80%の4,000万円、建物は半額の2,500万円合計が6,500万円といった評価になります。
その不動産を他人に賃貸していればさらに評価が下がります。

この相続税評価の仕組みを利用して不動産を利用した相続の節税ができます。
マンションは一般的に高層階ほど価格が高くなりますが、税金の基準は売買の価格ほど低層階と高層階の差がつかないので高層階を購入するとより節税ができます。


目的② 生命保険の代わりに



一般的にはローンを利用して不動産を購入すると団体信用生命保険という保険に加入します。
金融機関によっては保険料が金利に含まれていることもあります。

ローンを組んだ人が亡くなった場合に団体信用生命保険がローンを返済してくれるため残された家族はローンの返済が終わった不動産を取得します。

生命保険は非課税枠があり、すぐに現金を受け取ることができるため少し性質が違いますが財産を残せるという点では同じ効果があります。

不動産ですから相続登記が必要だということ、すぐに現金化できないということ、資産としての価値や生み出す収益(賃料)が年数が経過すると減少する点に注意しなければなりません。


目的③ 個人年金として



公的年金の持続可能性や給付水準に不安を感じて個人年金として不動産への投資をする人がいます。

ローンを完済してしまえば毎月の支払は管理費と修繕積立金だけになります。
家賃からコストを引いた残りのお金が年金の足しになります。

ただし、建物の築年数経過によって賃料が下がる可能性があること、賃借人がいなければコストだけがかかることが年金とは異なる点です

目的④ 投資として



純粋に投資として購入する人もいます。
家賃からコストとローン返済額を引いた残りのお金が利益になります。

新築なので10年程度はほとんど修繕費用はかかりません。
設備は最新のものが設置してありますので空室の募集時にも競争力があり、収益が安定しやすいというメリットがあります。



以上のように新築マンションでも購入目的を達せられればメリットがあり、購入そのものに問題はありません。


なぜ、失敗する人が続出してしまうのか?
次回、説明します。



2017年7月20日木曜日

積算評価の高い物件の探し方

金融機関の評価が出やすいと言われる積算評価の高い物件を探している人はたくさんいると思います。

しかし、市場には収益性が高く、地価の高い都市部では、積算評価の高い物件はそれほど多くありません。

積算評価の高い物件を探すにはどうすればでいいのでしょうか。



〇収益還元評価と積算評価の違い



収益還元評価は不動産の収益性に着目して、その不動産から将来得られるべき価値を評価します。
そのため、不動産が持つ収益力がそのまま評価額に反映されます。

積算評価というのは大まかに言うと土地価格+建物価格で不動産の価値を評価する査定方法です。
対象不動産を価格時点において再調達することを想定した価格を査定できます。

積算評価はコストを反映したものです。
かかったコストの評価であってマーケットでの評価は別です。

投資用不動産についてはコスト的評価とマーケット的評価が乖離する傾向が強いので、投資用不動産の価格査定には収益還元法を使うのが一般的です。


〇金融機関の収益物件の評価方法



金融機関が物件の担保評価を査定する場合、積算評価を採用する金融機関が多いため、積算評価を重視して物件を探す人がたくさんいます。

収益還元評価で担保評価をする金融機関もあるのですがそれほど多くはありません。

最近は金融庁から「アパートローンの物件評価は運営リスクを考慮して収益還元法を使いなさい」と指導されているので、今後は収益還元評価を採用する金融機関が増えるかもしれませんが、現在の主流は積算評価です。



〇融資に有利? 積算評価の高い物件を探すポイント



➀収益性の低い物件を探す


すごく端的に言えば収益性の低い収益物件を探すことが積算評価の高い物件を探す方法です。

投資用不動産は販売価格を収益還元法で算出するのが一般的です。
賃料を利回りで割って価格を算出します。

所在地や築年数、構造などの条件が同じなら割り戻す利回りは同じ値になります。
収益性(賃料)が高い物件ほど価格が高く、収益性が低い物件は価格が安くなります。

極端な例だと土地100坪のアパートと土地30坪のアパート土地の広さが3倍でも、家賃が同じで成約利回りが同じなら販売価格は同じ金額になります。

実務的には土地が広ければ販売価格の調整をしますが、土地が3倍でも利回りが1/3にはなりません。

この収益還元法と原価法の算出価格の違いに着目して物件を探すと積算評価の高い物件が見つかります。

実際に売られている物件では敷地内駐車場付きの物件や高層の建物が建たない低層住居専用地域など土地の広さに対して賃料が安い物件は積算評価が高くなる傾向があります。


②地方の物件は積算評価が高い可能性がある



首都圏と地方では家賃相場に大きな差があります。

月収100万円のマンションを例にします。
都心部なら1Kタイプ15部屋くらいで100万円くらいの賃料になりますが、家賃の安い地方なら同じ1Kでその倍の30部屋くらいの部屋数がないと月額100万円の賃料にはならない場合があります。

部屋数が倍になれば建物面積は当然倍以上になります。
建物面積が倍になれば、その大きさの建物が建つ広い土地が必要になります。

積算評価は土地建物の原価です。
土地には1㎡あたりの単価に差があるので都市と地方で大きな差はつかないかもしれません。

計算上、都心部も地方も建築単価(再調達価格)に差はありません。
地方の大きな建物は積算評価を高くします。


➀収益性の低い物件
②土地建物の大きい地方物件

この条件で物件を探すと積算評価が高い物件は探しやすいでしょう。
しかし、積算評価が高い物件=良い物件とも言えないので注意が必要です。



○積算評価が高い物件でもいいことばかりではない




➀「積算評価が高い=融資に有利」は大きな間違い



積算価格が高ければ次の物件が買いやすくなるというわけではありません。
金融機関の評価はさまざまです。
積算評価が全てではありません。

たとえ積算評価の高い物件を持っていても、積算評価で査定をする金融機関Aでは担保余力があると査定され、収益還元評価の金融機関Bでは債務超過と査定をされる可能性があるということです。


最近、金融庁では収益還元評価を推奨し金融機関の監視を強めています。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb160324.pdf

今は積算評価が主流でも数年後には収益還元評価を採用する銀行が増えるかもしれません。


②積算評価の高い物件はコストが高い


積算評価が高い物件は不動産取得税や固定資産税も高くなるので、収益的にはデメリットと言えます。

建物の規模の影響で積算評価が高くなっている物件は建物が大きい分、修繕費用が高くなります。

先ほどの月額賃料100万円のマンションの例で考えると1K×15部屋と1K×30部屋では賃借人が全て入れ替わると単純計算では原状回復費用は2倍かかるということになります。

共用部分の修繕を考慮すれば同じ家賃を得るために倍の以上の修繕費を払うことになります。


③建物の比重が高い物件は売却時の税金に注意


利益確定のために収益物件を売却することは不動産賃貸業を継続するうえで重要な仕事のひとつです。

建物の比重が高い物件は売却時に多額の税金がかかる場合があるので気を付けなければなりません。

売却時の所得税は売却の結果、儲かったら払う仕組みです。
売れた金額‐(売却経費+取得費)=儲かった金額ですが、この取得費は購入金額とイコールではありません。
建物の部分は減価償却されます。

建物の比率の高い物件は減価償却により売却時に取得費が小さくなり、儲かった金額が高くなる可能性があり、税金が高くなります。



○積算評価の考え方は投資戦略や目標によって判断が分かれる




投資用不動産の価値は積算評価ではなく収益力です。
収益のために投資をするのですから当然です。

融資を利用しない人、収益還元評価を採用している金融機関の融資を利用する人には積算評価が高くても嬉しくないのです。
理由は上記の通りコストが高く収益に悪影響だからです。

しかし、担保として積算評価を重視している金融機関もあります。
取引をする金融機関によっては積算評価は無視できません。

まずは自分の利用する金融機関が物件の何を重視しているのか知らなければなりません。

どういう投資戦略で進んでいくかによって積算評価の考え方は変わってきます。
不動産賃貸業は長期間の物件の運営で利益を出していくものですから積算評価重視だけではなく、状況や投資の目標に応じて適切な投資計画を考えて、物件や融資先を決めていくことが大切です。



2017年7月6日木曜日

「不動産投資の甘い罠」

少し前の話になりますが、6月24日号の週刊ダイヤモンドが「相続・副業の欲望につけこむ 不動産投資の甘い罠」という特集を掲載しました。

雑誌なので大げさに書いてある部分はたくさんあると思いますが、複数の業者の資料を入手して検証するなど非常に興味深い内容でした。

セミナーや不動産投資の本では良いことだけしか教えてもらえないですから、たまにはこんな内容の本を読んでみるのも良いのだと思います。


今回は週刊ダイヤモンドの特集「相続・副業の欲望につけこむ 不動産投資の甘い罠」について取り上げてみたいと思います。



①相続税対策としての不動産投資



相続税対策としてローンを利用してアパートを建設することは有効な手段のひとつです。

アパート建設による相続税対策が有効となるにはいくつかの前提条件があります。

多額の現金を持っている場合や自宅以外に土地を持っている場合には賃貸需要が見込める立地条件で収支が合うなら検討しても良いでしょう。

週刊ダイヤモンドでは以下の問題点をあげています。

・リスクを負う相続税対策が必要のない人のアパート建設・35年一括借り上げ(サブリース)のトラブル

サブリースのトラブルについてはこちらの記事をご覧ください。
「サブリースのトラブル 原因と対処法」
http://fp-s-fudousan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_25.html


②副業としての不動産投資



「受け取れる年金が減るのでは?」など将来への不安から、不動産投資をする人が増えています。

セミナーや不動産投資の本の影響で不動産投資の規模を拡大してセミリタイアを目指している人もいるかもしれません。


週刊ダイヤモンドは副業としての不動産投資の問題点として以下の3点をあげています。

・家賃が下がらない前提でのシミュレーションによる投資判断・赤字収支の不動産投資・返済比率の高い融資


〇不動産投資は甘い罠だらけ?



いろいろと問題点があがりましたが資産運用としての不動産投資は正しく行えば決してリスクの高いものではありません。

物件を購入した後の運営について事前にリスクを考えておけば、破綻をするようなことは少ないのです。

セミナーや不動産投資の本では教えてもらえないのかもしれませんが、利回り10%のRC造の物件をフルローンで5棟買ったら人生全てうまくいくわけではありません。

どんな物件でも建物が古くなれば家賃は下がります。
立地条件によって下落率に差はあると思いますが、全く下がらないということはありません。

建物は古くなれば修繕をする必要があります。
設備の更新も必要です。
修繕をしなければ家賃の下落率が上がってしまいます。

工事には費用がかかるのでその費用は賃料から積み立てておかなければなりません。

収益不動産は保有してから経営がスタートします。
シミュレーションの段階から家賃の下落や修繕費用を試算してあれば、このリスクは事前に準備ができます。

投資に失敗している人の多くはシミュレーションの甘さに原因があります。
単年や10年分くらいのシミュレーションしかしていなかったり見通しが楽観的だったり、なぜか節税分が収支に入っていたり。

きちんと家賃下落や修繕費、金利上昇などのストレスをかけたシミュレーションをしてあれば赤字収支の不動産投資や高い返済比率の不動産投資は実行する意味がないことが分かると思います。


私はいつも不動産投資は想像しているほどは儲からないと伝えています。

「甘い罠」に引っかからないためにも冷静にシミュレーションをして投資判断をしてください。


2017年6月22日木曜日

不動産売却で失敗しないために #2

最近の不動産価格の高騰で利益確定のために物件を売却する人が増えています。
今回は物件の売却のために知っておくべき知識の第2回です。


「収益物件は未公開にしたほうが高く売れる?」



○「未公開物件」の魔法


市場にいる多くの買主は「未公開物件」にとても弱いようです。
実際に「未公開物件」だけを紹介してほしいという問い合わせはたくさんあります。

未公開物件=優良物件と思い込んでいる人がたくさんいるのだと思います。

実際にある会社からレインズに数ヶ月前から掲載されている物件を未公開物件だと言って紹介されてきたお客様が相談に来たことがあります。

わざわざ1枚にまとまっている図面を概要・レントロール・間取図に分けて未公開風に仕立てて紹介されていました。

未公開物件だし良い物件だと思うから購入を検討しているということでしたが、レインズの登録画面を見せるとあっさりと購入をやめました。

※物件の善し悪しの判断基準が未公開か否かになっているのは投資家としての判断能力はいかがなものかと思いますが。

こんな人がいるくらいですから「未公開物件」として販売することには判断を惑わせる一定の効果があります。


○未公開物件の賞味期限



物件を売却する時には売れやすい時期があります。
①売り始めてすぐ
②価格を改定した時

この時期に物件がよく売れる理由は単純でたくさんの人に紹介されるからです。

物件を売り出すと世の中の不動産会社は新物件を条件の合う顧客に紹介します。
その後は条件の合う顧客から問い合わせが来るたびに紹介を続けます。

最初は今までストックしていた顧客にまとめて紹介をするので成約になる可能性が高いのです。

価格を改定した時も同じです。
今までストックしていた顧客にまとめて紹介します。
価格を改定しているので紹介できる顧客のレンジも広がります。
だからこのタイミングの成約率は高いのです。

未公開として扱うならこの2つのタイミングで行い、反響がなければ紹介できる顧客の数を増やすため情報を公開するのが正しい売り方です。

未公開物件としての賞味期限はせいぜい2週間ほどです。


○未公開物件は高く売れる?



一部の未公開物件マニア以外にはあまり効果がありません。

特に収益物件は収支が合わなければ売れないので、未公開物件でも割高な物件はシミュレーションをした段階で分かってしまいます。

いくら未公開物件が大好きな人でも未公開物件なら収支が悪くても買うという人はいないのではないでしょうか。


○買主のフルローン・オーバーローンのために未公開にする



フルローンやオーバーローンのための二重契約のために物件を未公開にするケースもあるようです。

これは金融機関に販売価格を知られないという点では一定の効果があるようですが、未公開にして商談の数を減らすデメリットを超える効果はないように思います。

フルローンやオーバーローンを組むということは融資額が増えるということです。
よほど利回りが高くない限り収支は合いません。

利回りが高いということは価格は安くなります。
物件を高く売るという目的は達成できなくなります。


○物件を売るための最善策は?



一定期間を過ぎたら物件の情報は公開し多くの商談の機会を持つよう努力するべきです。

情報を公開した後は問い合わせの数、物件の見学、商談の数を把握し成約を待ちます。

問い合わせが多くても成約にならない、物件見学には来るけど成約にならないという場合、不動産会社の営業の力不足か物件の販売条件が市場の投資家の求めるものと合わないかどちらかの可能性が高いです。

その場合には販売プランの見なおし、条件の改定が必要です。
不動産の売却は長期化すると売主には大きなストレスになります。

そのストレスに付け込んで転売事業のために物件を相場よりも安く売らせようとする不動産会社もあります。

物件を売る側もその物件の適正な価格を知って、不動産会社と販売戦略を相談することが利益の最大化につながります。

2017年6月14日水曜日

不動産売却で失敗しないために #1

最近の不動産価格の高騰で利益確定のために物件を売却する人が増えています。

今回は物件の売却のために最低限知っておくべき知識を説明します。



〇一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違いと、どれを選択すればいいか?



不動産の売却を依頼する時に媒介契約(売却依頼のための契約)をします。
3種類の媒介契約から選んで不動産会社に売却を依頼します。
まずは媒介の種類について説明します。

①一般媒介契約


複数の不動産業者に重ねて仲介を依頼することができる契約です。
不動産業者に販売活動の報告義務はありません。

指定流通機構(レインズ)への登録義務はありません。
依頼主も自分で購入希望者を見つけることができます。

不動産業者は他の会社と販売競争をすることになるので、業者側から積極的に勧められることはありません。

一般媒介契約の物件は専任媒介の物件と比較して販売に注力してもらえないこともあります。(広告費をかけてもらえないなど)


②専任媒介契約


特定の不動産業者1社のみに仲介を依頼する契約です。
不動産業者は依頼主に2週間に1回以上の頻度で売却活動の状況を報告する義務があり、物件を指定流通機構に登録しなければなりません。
依頼主は自分で購入希望者を見つけることができます。



③専属専任媒介契約



特定の不動産業者に1社のみに仲介依頼する契約です。
不動産業者は依頼主に1週間に1回以上の頻度で売却活動の状況を報告する義務があり、物件を指定流通機構に登録しなければなりません。
依頼主は自分で購入希望者を見つけることはできません。


〇指定流通機構(レインズ)への登録



専属専任媒介契約や専任媒介契約を締結した場合、他の不動産業者に重ねて依頼することはできません。

しかし、どんなに大きな不動産会社でもその能力には限界があります。
そこで専任(専属専任)媒介契約を締結した不動産業者には全国の不動産業者がアクセスできる情報ネットワークに登録することを義務付けています。

物件の情報を登録することで登録された情報を基に全国の不動産業者が対象の物件を顧客に紹介できます。

窓口がひとつ(専任)でも売却物件の情報が広く行き渡るように宅建業法で登録を義務付けています。


〇3種類の媒介契約、どれを選ぶべき?



どれを選んでも手数料に差はありませんから、どれを選んでも変わりありません。
依頼する不動産業者の販売姿勢によります。

普通に考えると信じられないかもしれませんが、専任媒介の業者が宅建業法に違反してレインズに物件を登録しなかったり、登録をしても他の不動産業者には資料を公開しないなど自社以外の不動産業者が物件を売らないように物件情報を公開しない不動産業者はたくさんあります。

この仕事をしていると媒介を受けている業者に物件資料を請求して、いつまで経っても資料が送られてこないことは日常茶飯事です。

自社で売却ができれば手数料を売主買主両方からもらえるからというのが理由ですが、コンプライアンスよりも手数料という不動産業者は山ほどあります。
会社の規模の大小は関係ありません。

買主は未公開物件を好むので一定期間の未公開は「未公開物件」という言葉で物件の質を錯覚をさせる効果はありますが、その効果は長くても2週間程度です。
一定期間を経過すれば未公開で販売することは成約を遅らせるだけです。


情報が公開されないということは商談機会の損失につながります。
10人と商談するよりは100人と商談をしたほうが成約できる可能性が高いことは当然です。



媒介契約をした不動産業者が情報公開をしてくれるかは売却を依頼してみなければ分かりません。

3つのうちどの契約を選ぶかというよりは媒介契約後の売却活動をチェックすることが大切です。

専任・専属専任であれば売主はレインズの登録を確認できるシステムがあります。
レインズに登録してあっても不動産業者が詳細情報を提供しないこともありますので、依頼した会社以外が物件の広告をしているかなどチェックをする必要があります。


依頼された不動産業者が売主の利益のために売却活動をすれば問題はないのですが、今の日本の不動産売却のシステムでは売主は自分の利益のために不動産業者の販売活動をチェックする以外に方法はありません。


2017年6月2日金曜日

120年ぶりの民法改正「瑕疵担保責任」は「契約不適合」へ

企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参院本会議で可決、成立しました。

民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直しました。

インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視しました。
改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行となります。

改正された項目のうち不動産に関連するものは以下の点です。

①敷金と原状回復について明文化
②賃貸借の連帯保証について
③賃貸借の規定(期間や地位の移転など)
④瑕疵担保責任→契約不適合へ

①~③は以前にこのブログで取り上げたとおりです。

「120年ぶりの大改正 民法改正の不動産賃貸業への影響は?」
http://fp-s-fudousan.blogspot.jp/2016/05/120.html
http://fp-s-fudousan.blogspot.jp/2016/05/120-2.html

今回は民法改正のうち「瑕疵担保責任は契約不適合へ」について取り上げます。


〇瑕疵担保責任とは?


例えば、売買契約を締結し引渡しをした物件に雨漏りが発見されたとします。
現民法では売買目的物に「瑕疵」が存在するとして、売主は買主に対して、瑕疵担保責任(現民法570条)を負うことになっています。

不動産取引においては目的物を引渡せば売主は債務を履行したことになります。
目的物に不具合があっても、買主は売主に対して債務不履行責任を問うことはできません。

現民法570条は目的物に隠れた瑕疵がある場合には、売主に対して損害賠償請求や解除権を行使することができるという救済規定を定めています。


〇改正民法では契約不適合へ


改正民法では売主は欠陥がない建物を引き渡さなければならない契約責任があり、雨漏り等の欠陥がある建物を引き渡せば、売主は債務不履行責任としての契約不適合責任を負うというものです。

これまでの瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」という限定があり、買主側が注意してもわからないような瑕疵であることが要求されていました。

今回の改正では買主に過失があっても責任追及そのものは否定されなくなります。
(損害賠償の算定にあたって過失相殺される可能性はあります)


〇契約不適合責任


目的物に契約不適合がある場合、買主は売主に対し、「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と規定されます。

売主が追完義務の履行に応じない場合は契約不適合の程度に応じた代金減額請求ができることになります。

契約不適合に基づく損害賠償は、通常生ずべき損害は全てが賠償の対象とされ、現民法と比べて買主が保護される内容となっています。


〇不動産取引はどう変わるのか?


現在の民法の瑕疵担保責任と同じく公序良俗に反しない範囲であれば、売主買主の合意で責任を免除したり、範囲を限定することはできるだろうと思います。
(不動産業界の標準契約書では瑕疵担保責任は3か月間)

今回の改正は判例などで定着しているこれまでのルールを条文に明記し、国民に分かりやすい法律にするのが大きな目的ですから大きな変化はありませんが、買主(消費者)の保護がより明確になったと言えるでしょう。

今後は「契約の目的に適合しているか」ということが大切になります。
「自分がその家で暮らすため」「投資のため」など購入の目的を明らかにしておくことが必要になります。




2017年5月18日木曜日

正しい価格交渉のススメ

不動産投資のポータルサイト各社の調査からこの2,3年で不動産価格が高騰したことが分かります。

価格が高騰している現在の市況では優良物件を購入することは難しいのですが価格交渉をすることで状況を変えることができます。

現在売りに出ている価格ではいまいちな物件でも、価格が下がる事で優良物件に化けることがあります。

価格交渉ができれば優良物件を購入できる可能性があるのです。

しかし、正しい知識で価格交渉をしていない人が多く、せっかくの取引の機会を逃してしまうことがあります。




〇ネットの価格交渉術は間違いだらけ


インターネットで不動産の価格交渉について調べると「交渉術を身につけよう」「指値のテクニック」など、いろいろな情報がでてきます。

不動産取引の実務を行う者から見ると、間違った交渉のやり方がたくさん書いてあります。

例えば、物件の粗探しをする指値の方法です。
中古物件には直さなければならないところなど何かあるのは当然です。
ですからリフォーム費用などを交渉すること自体は悪くありません。

しかし、物件の悪いところを指摘するような交渉にならないよう注意しなければなりません。

不動産の売主も自分の物件を悪く言われれば気分を害します。
この人には売りたくないと思われてはどれだけの交渉術があっても交渉は成立しないでしょう。



〇物件の所有者は売主という大前提


価格交渉をする人の中には不動産会社の担当者に交渉術を披露する人がいます。
仲介物件の場合は価格交渉に対する意思決定をするのは「売主」です。

不動産会社が売主だとしても相手は法人ですから一担当者が重要な決定をすることはありません。
これでは交渉の相手を間違っています。

仲介物件の場合、売主への価格交渉をするのは不動産会社の担当者です。
不動産会社の担当者に交渉するのではなく売主と交渉するために必要な情報を与えることが必要です。



〇交渉を有利にするための条件とは?


①購入できると示す


価格交渉をするにあたって一番大切なのは交渉が成立すれば購入できることを示すことです。

売る側にとっては当然ですが、物件を買えるだけの資金がない人と価格の交渉をするのは時間の無駄になってしまいます。

交渉が折り合っても結局買えないとなれば、交渉している間の機会損失も起きてしまうかもしれません。

交渉の前提として融資の承認を受けていたり、その見込みがあることを具体的に伝えます。交渉をするに値する人であることを示すためです。

どんなに材料をそろえて交渉に臨んでも資金面で不安があれば、交渉の土台にすら乗らないでしょう。

②交渉は書面で行う


書面とは購入申込書を提出したうえで行うということです。
売主に手紙を書く必要はありません。

交渉が成立すれば購入するという意思表示が必要です。

この物件はどのくらい指値ができるかと質問を受けます。
売主の意向を確認することはできますが、この状況では何も交渉をしていません。

この段階で引き出した指値はもともと引いてもいいと思っていた、言い方を変えれば売りたい価格に指値対策で乗せていた価格を引いた金額である可能性が高いです。

どこの誰かも分からない、資金面で問題がないかどうかも分からない、金額が下がれば買うかどうかも分からないという状態での交渉には曖昧な返事をする売主も多いですから購入申込書の提出は必須です。

③指値はやりすぎない


売主は売却物件の査定をしていますし、仲介会社の担当者から価格のアドバイスも受けています。
明らかに相場から外れた指値をしても門前払いという結果になります。

相場よりも1~2割程度安めの金額を目途に価格交渉をすると受け入れてもらいやすいでしょう。

まずは提示した金額を検討してもらうことが交渉の第一歩です。
大幅な指値をして検討すらしてもらえないのなら交渉する意味がありません。

大幅な指値がとおることもありますが、その多くはもともと法外に高い物件だったものが
相場付近に落ち着いたというのが実態です。



〇指値をしやすい物件とは?


売り出してからすぐの物件よりも売り出してから半年から1年くらいの物件の方が交渉がしやすいことは当然です。

他には価格に動きのある物件です。
いつまでも価格の動かない物件より売主に売却の意思があります。
いつまでも同じ価格で売り続けている物件は売却の意思が弱いことが多いです。

物件ごとに個別の売却の事情を確認する必要がありますが、個人情報保護ということもあり、あまり詳しい事情は聞けないことが多いでしょう。

売り出してから期間が経過している物件で自分が気に入っているのであれば、値引きの価格交渉をしてみるべきです。

ただ、条件の良い収益物件は価格交渉はまったくできないことが多いですし、逆に交渉しないで満額で購入したほうがいいでしょう。

交渉をして購入する物件か満額で購入したほうが良い物件か見極めることが大切です。



〇取引相場を理解して価格交渉を



不動産の取引では売主は高く売りたい、買主は安く買いたいという願望があり、その折り合いのつく地点を探すのが価格交渉です。

不動産取引では単に数字だけでなくその物件に対する思い入れなどの「感情」が入るため交渉を難しくします。

指値をとおすために、この価格でないと希望する収支にならないとか、立地条件や建物のマイナス点を指摘して物件価格を下げるような一方的な論理で交渉をすると「感情」の部分で失敗をする可能性があります。

物件の売主は所有者(共有者)だけですが、買主は市場にたくさんいることを忘れてはいけません。

感情的にならずに交渉をするためには客観的なデーター(取引相場)に基づいて交渉をすることが折り合いをつけるために大切なのだろうと思います。


2017年5月10日水曜日

改正住宅セーフティネット法が成立 アパート経営への影響は?

4月19日、参議院本会議で改正住宅セーフティネット法が可決、成立しました。


この法律は高齢者や所得の低い子育て世帯向け賃貸住宅として、空き家・空き室を登録し、情報提供する制度を創設するものです。


登録制度は、空き家の所有者が賃貸住宅として都道府県などに届け出をします。
高齢者らの入居を拒否しないことなどを条件とし、都道府県は登録物件の情報を入居希望者らに広く周知します。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000153682.pdf

この法律にアパートオーナーへのメリットはあるのでしょうか。


〇住宅確保要配慮者の入居に限定はしないが、拒まない賃貸住宅



登録済みの住宅の情報を開示することで入居を促進しやすくなります。
登録した住宅ではすべての住宅要配慮者を対象にしなくても良いので、高齢者や被災者のみ入居を拒まないというような選択ができます。


〇住宅確保要配慮者に限定した「専用住宅」として登録した賃貸住宅



住宅確保要配慮者に限定した「専用住宅」として賃貸住宅を自治体に登録すると、最大4万円までの家賃補助と家賃債務保証料最大6万円までの補助が受けられます。

登録住宅の耐震改修やバリアフリー化の費用の助成を受けることもできます。
(最大200万円)


〇これからの日本の人口構成とアパート経営



平成32年には65才以上の高齢者の人口は29%を超えます。
賃貸住宅を検討する3人に1人は高齢者かもという時代が来るのです。

平成27年の統計によると比較的高齢世帯の少ない東京都でも22%は65歳以上の高齢者です。

日本賃貸住宅管理協会が、賃貸住宅の大家の意識を把握するため、去年12月からことし2月にかけて行った調査によると「高齢者の入居に拒否感がある」と答えたオーナーは
約60%というデーターがあります。

また、1人暮らしの高齢者の入居を制限をしていると答えた大家は全体の14.2%、高齢者のみの世帯の入居を制限している大家は13.4%でした。

これから人口は減り住宅は余っていく傾向があります。
よほど賃貸需要の高いエリアでなければ満室でアパート経営をすることは難しくなるかもしれません。

入居審査で高齢者や生活保護受給者などを受け入れないオーナー様もたくさんいらっしゃいます。

これからは住宅確保要配慮者を拒んでいることはできなくなるかもしれません。


○住宅確保要配慮者を受け入れるためのリスクヘッジ



上記ニュースで入居制限をしている大家は「家賃支払いに対する不安」「屋内での死亡事故の不安」を理由としています。

住宅確保要配慮者を受け入れるのであればこの不安を解消しなければなりません。

・家賃の支払いに対する不安


今回の改正法案に住宅確保要配慮者の入居円滑化に関する措置として家賃債務保証の円滑化があげられています。

住宅金融支援機構が家賃保証保険を引き受けることで保証会社の負担を減らし、家賃保証会社の利用をしやすくします。

・屋内での死亡事故の不安


警備会社やガス会社などが各種の見守りサービスを行っています。


アルソック みまもりサポート
http://www.alsok.co.jp/person/mimamori/

東京ガス くらし見守りサービス
http://home.tokyo-gas.co.jp/service/mimamori/index.html

他には火災保険の特約を利用して事故に備えることもできます。



長期的に考えれば日本の人口は減り、住宅は余る時代が来ます。
すでに空室に悩んでいる物件は法律の整備を機に入居審査の見直しを検討してみるがあるかもしれません。


2017年4月24日月曜日

日銀アパートローン監視強化 収益物件は積算評価が高ければ安全?

積算評価が高い物件を探している人、たくさんいると思います。
信用棄損にならないために積算評価の高い物件を買いなさいと書いてある本やコラムなどもたくさん見かけます。

物件の積算評価が高ければその投資は安全なのでしょうか?


日銀や金融庁がアパートローンの監視を強めているという記事をよく見かけるようになりました。

〇金融庁・日銀がアパートローンの監視強化


4月19日に公表された金融システムレポートでは「不動産市場は、全体として過熱の状況にはないと考えられるが今後、リスクプレミアムの過度な縮小や過度に強気な賃料見通しが生じることがないか、注意深く点検していく必要がある。」と指摘し「入口審査での収支計画の検証や中間管理の適切な実施等を通じて、与信管理能力を高めていく必要がある。」としています。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr170419a.pdf

過去の金融システムレポートでもこのように指摘しています。

金融システムレポート別冊(2016年3月)での指摘
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb160324.pdf

晩婚化や高齢化、人口の社会移動(地方圏→大都市圏、郊外→市街地)等を背景に貸家需要が増加している。

貸家業向け貸出は、基本的には、こうした社会的要請に金融面から応えるものである。

貸家市場の動向は様々な需給要因の影響を受けるが、いずれにせよ、金融機関において、貸家業向け貸出の実行段階における物件毎の収支見通しの検証、実行後の中間管理などは、自身のリスク管理として重要である。

貸家戸数がこれまで増加を続けてきた中で、空室率は、安定的に推移してきたが、今後の動向によって大きく変化し得る。

足もとの貸家のビンテージはやや長めとなってきていることから、滅失はある程度増加していくとみられ、これは空室率の低下方向に作用するが、世帯数の減少転化という大きな環境変化が見込まれるだけに、需給の見極めがこれまで以上に重要になってきている。

①地域や物件特性等に基づく類型化やデータ・情報の整備
入口審査における収支見通しの検証
(先行き入居率の妥当性検証方法や下方ストレスのかけ方等)
③中間管理の頻度やポートフォリオ分析等に充実の余地がみられた。

金融機関は、これらの中から、自らの貸家業向け貸出の実情(残高の大きさ、営業推進方針等)を踏まえた対応を講じていく必要がある。

日本銀行は、各地域金融機関の取り組みの実情を踏まえつつ、考査・モニタリングを通じて必要な改善を促していく。

一部を抜粋してみました。

通常、収益物件は収益還元法で評価をします。
積算評価は土地建物の価格を計算するだけなので運営リスクが反映されません。

日銀は入口審査における収支見通しの検証に充実の余地があるとしています。

貸家業向け貸出に係る与信管理上の入口審査
①収入項目
物件所在地における経年別家賃相場・入居実績や、先行きの人口・世帯推計を踏まえた家賃・空室率の検討・設定

②支出項目
運営費用(委託管理費、管理費、修繕費、大規模修繕費用等)、固定費用(税金、保険料)等の検討・設定

③キャッシュフロー分析
融資期間に応じたキャッシュフローの安定性分析(DSCR の確認等)、ストレス事象(収入の減少、金利上昇等)を前提としたリスク評価

④上記の①~③の収支シミュレーションに基づくキャッシュフローをキャップレート(当該物件に対する期待利回り)で割った割引現在価値等による評価=収益還元法

⑤事業主の非賃料収入や他の保有資産の確認

日銀は上記の分析結果をもとに案件採り上げの可否のほか採り上げ条件(自己資金の投入要否や融資期間)を決定するように改善を促していくと言っています。

アパートローンの物件評価は運営リスクを考慮して収益還元法を使いなさいということです。


〇収益還元法は難しい


そう言われても収益還元法で評価をするのは難しいという金融機関側の都合もあります。

金融機関が収益還元法を採用できない理由として還元利回りの設定が難しいことがあげられます。

還元利回りは取引事例や販売中物件の利回り、公開されているデーターを参考に算出するのが一般的ですが、日本の不動産市場は情報公開が進んでいないため金融機関は還元利回りを算出するための根拠が集められません。

そのため収益還元法で評価をする場合は外部の評価機関に依頼している金融機関もあります。

外部に依頼すれば費用がかかるのでなるべくなら内部で評価ができる積算評価を採用したいということなのだろうと思います。


〇アパートローン利用時に注意しておきたいこと



日銀や金融庁が収益還元法で審査をしなさいと言ってもすぐに状況が変わるわけではないでしょう。

しばらくの間は積算評価が高い物件は融資がつきやすい傾向が続くと思います。
しかし10年、15年と経過して物件を売却する事情ができた時に将来にわたって同じ審査基準であるという保証はどこにもありません。

融資がつかない物件=購入者が少ない→価格が安くなる(需給のバランス)

投資の安全ということを考えるのなら土地建物の評価ではなく、多少環境が悪化したとしても収支がマイナスにならない(急いで売る必要がない)キャッシュフローを得られる物件と資金計画をたてること

これが大切なのではないでしょうか。


2017年4月18日火曜日

不動産の購入・売却の時に知っておきたい「瑕疵担保責任とは?」

不動産の取引をする時に「瑕疵担保責任」や「瑕疵担保免責」という言葉を聞くことがあると思います。

正しく理解していないと思わず被害を受けることがあります。


不動産の売買契約でとても重要な「瑕疵担保責任」についてお話しします。


〇瑕疵担保責任とは?


瑕疵(かし)は大まかには傷、欠陥などという意味です。
瑕疵担保責任というのは売ったものに欠陥があったら売った人は買った人に責任を負うということです。
(責任を負う対象は隠れた瑕疵なので事前に申告したものは除きます)


瑕疵担保責任は民法と宅建業法で決められています。


①民法上の瑕疵担保責任



民法では個人間の売買に関する瑕疵担保責任が定められていて買主が瑕疵があると知った時から1年間請求することができるとなっています。
(10年の時効あり)

これだと家を売った後、10年間保証しなければならなくなるので、実際の取引では特約で期間と範囲を決めます。

一般的には3か月間で建物の主要構造部です。
設備は7日間などと定めることもあります。

隠れた瑕疵があった場合、買主は売主へ損害賠償を求めることができます。
欠陥などが重大な場合で購入の目的が達成できないのなら契約の解除を求めることもできます。

契約当事者間で合意すれば免責とする特約も可能です。



②宅建業法での瑕疵担保責任



宅建業法では売主が宅建業者の場合の瑕疵担保責任について定めがあります。
宅建業者は最低2年間の瑕疵担保責任を負わなければなりません。

新築の場合には住宅品質確保法で基本構造部分の瑕疵について10年間の保証を義務付けています。

当事者間で合意をしても免責とすることはできません。



③消費者契約法



個人でも宅建業者でもない法人が売主、買主が消費者の場合には消費者契約法が適用になります。

直接の条文はありませんが、消費者側不利になる特約は無効とされています。

判例等から1年程度の瑕疵担保責任の期間を設けなければならないようです。

法人で所有している不動産を売却する時に買主が消費者だった場合には消費者契約法が適用されて瑕疵担保免責の特約はできません。



〇民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合へ



今回の改正により、「瑕疵」という用語は使用されなくなり、「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」という表現になります。

瑕疵担保責任では目的物に欠陥があった場合、損害賠償請求が認められて購入目的を達成できなかった場合の契約解除を認めています。

今回の改正案では契約不適合がある場合、買主は売主に対し「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」という規定に変わります。

現状の瑕疵担保責任ではできないとされていた履行の追完(欠陥を修理して引渡す)が認められることになります。

改正案では買主が催告しても売主が追完義務の履行に応じない場合に契約不適合の程度に応じた代金減額請求が可能となります。



〇不動産取引で注意する点は?




・不動産を購入する場合


建物が古い場合など瑕疵担保免責での契約を求められることがあります。
いったん契約を締結すると一方の都合で簡単に契約を解除することはできません。

瑕疵担保免責で契約をするのなら契約前に建物の調査をする、修繕の費用を用意しておくなど対策が必要です。


・不動産を売却をする場合


売主は物件の瑕疵について誠実に情報提供をし契約前に瑕疵を明らかにしていくことがトラブル防止になります。

今後は建物のインスペクションについて説明が義務化されますので
専門家に調査を依頼という選択もあります。



物件の隠れた瑕疵をめぐるトラブルは非常に多く解決には時間と費用を要します。

買主は物件の状態を十分に理解し、売主は誠実に情報を開示することが大切です。


2017年3月24日金曜日

不動産売却で陥りがちな失敗

先日、2017年の公示地価が公表されました。
公示地価からも分かる通り不動産価格は4,5年前と比較して確実に上昇しています。

不動産価格が安い時期に購入した物件を売却して利益を確定する人もいると思います。

今回は不動産売却で陥りがちな失敗についてお伝えしようと思います。


○高値で売れるはずが・・・



不動産を売却する時にインターネットで価格査定をする人は多いと思います。
特に一括査定サイトを利用する場合に注意が必要なのが「査定額」=「売買が成立する金額」ではないということです。

査定は買取価格をだしているわけではありません。
このくらいの金額なら売れるだろうという金額を予想して提示しているだけなのです。

この前提を理解しないまま一括査定を利用して売却の長期化、結果として低い金額で売却してしまうことがあります。

一括査定サイトの場合、多くの不動産会社は相場よりも高く査定します。
よほど特殊な条件の物件でない限り、相場よりも高いということは売れる可能性が低いということになります。

どうして売れる可能性が低い金額を提示するのか?
それは査定価格=買取価格ではないからです。

買取価格を提示するなら転売した時に売れるか?、利益率は?、販売経費は? などのいろいろな検討をして価格を提示します。

しかし、査定額はその金額で売れなくても不動産会社にダメージはありません。
それなら高い金額で査定をして販売力の高い会社だと印象付ける、売主を喜ばせることに重点をおいて査定をする会社が多いのです

実際に売主は高い金額の査定をした不動産会社に売却を依頼しがちです。
高い査定をするということは販売力があると勘違いしてしまうからです。

現実は売主のご機嫌取りのリップサービスで高い査定をしているのです。

不動産売却は売主にとってストレスになります。
物件がなかなか売れなければ、どうして売れないのだろうと悩んでしまう売主もいます。

売却開始から数カ月経つと、売主はだんだん売れない不動産を持っていること、売却に苦戦していることに疲れてきます。

そこで不動産会社は値下げの提案をしてきます。
売りやすい金額や場合によっては買取業者が提示した買取価格です。

結果として長い時間をかけても相場通り、もしくは相場よりも安い金額で売ることになってしまいます。

これは不動産会社の常とう手段なのですが、結果として成約価格が査定額を大きく下回ったとしても査定額にクレームを言う売主はごく少数なのです。

無責任で間違った査定を基に売却を依頼し、時間を無駄にしたのですから、憤りを感じても不思議ではないのですが、「長い間、売却活動を頑張ってくれたから」など情がわいてしまうのかもしれません。


〇売却で失敗しないためには



①査定を依頼した不動産会社の専門分野を知る


売買に強い会社・賃貸に強い会社・住宅に強い会社・投資用不動産に強い会社など、不動産会社には専門分野があります。

賃貸がメインに会社に依頼をしても物件の売り方がわからない担当者がたくさんいます。
査定すら満足にできない可能性もあります。

実需の住宅販売がメインの会社には投資用不動産の販売ノウハウがないことがあります。
例えば、住宅ローンの取り次ぎはしているが、アパートローンは未経験だったりします。

投資用不動産には契約時に合意しておかなければトラブルになりかねない特有の要素があります。

販売のノウハウがない会社はそのようなトラブルになる要因を理解していないので契約書の特約が抜けてしまうなどトラブルの元を作ってしまいます。

ホームページなどでどの分野に強い不動産会社なのか調べて依頼する会社を選びましょう。

②査定の根拠を聞く


査定をする不動産会社は何よりも媒介契約が欲しいために、通常よりも高い値段で査定額を提案してくるかもしれません。

不動産の査定額を提示するにはそれなりの根拠があります。
類似物件の成約事例や金融機関の融資状況などです。

どうしてその査定額になるのか説明を聞いて比較することが大切です。
不動産は査定する人が違えば価格が大きく異なるようなことはありません。

査定物件と同条件で探している買い手がいるとか、自社の顧客の数とか根拠に乏しい理由を話す不動産会社の査定額は信用できません。

③査定額で依頼する不動産会社を決めない


査定額で不動産会社を選ぶと、本当の査定額を提示した優良業者より媒介契約を取りたいがために、高い査定額を出した不動産会社の金額で売り出し始めてしまうことになってしまいます。

もちろん、高い価格で売れるに越したことはありません。
相場より高い値段で出しても、たまたま成約できることもあるでしょう。

しかし、相場より高い物件はあまり反響がなく多くの場合、売れ残ってしまいます。

販売をお願いしていた不動産会社は、「今より価格を下げないと売れないかもしれません。」と言うでしょう。
理由は適当に後付けされます。

相場より高いのなら相場通りの価格に下げなければ売れません。


不動産投資の終点は売却による利益の確定です。
投資の成果が決まる最も重要な「売却」で失敗しないためにも査定額は冷静に受け止めて自分の物件の価値を判断して下さい。


2017年3月14日火曜日

旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは4人に1人

東日本大震災から6年が経ちました。
昨年の熊本地震も記憶に新しいところです。

株式会社オーナーズ・スタイルが行った調査によると、

旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは4人に1人、賃貸住宅を所有するオーナーの半数近くが地震保険未加入ということが分かりました。


~旧耐震基準~
1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準。
震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、大きな破損もしない性能が基準となっています。


〇旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは4人に1人



同調査によると旧耐震の賃貸住宅を所有しているオーナーは25.5%。
築36年以上の建物を4人に1人のオーナーが所有していることになります。

同調査でも指摘されていますが、旧耐震の物件の多くが耐震診断や耐震補強工事を行っていない建物で、その物件には入居者が住んでいると推定されます。

目黒区内の木造住宅等耐震診断実績(H18~24)によると耐震診断を行った941件のうち、震度6強程度の地震での倒壊の可能性がある建物が約99.5%という結果が出ています。
※倒壊する可能性が高い(857件)、倒壊する可能性がある(79件)


〇地震保険に未加入の賃貸住宅を所有するオーナーは半数近く



所有する賃貸住宅全体の地震保険への加入状況を尋ねたところ、加入している55.6%、加入・未加入が混在している9.9%、加入していない34.5%であることがわかりました。

約半数のオーナーが地震保険に加入していない賃貸住宅を所有していることになります。

地震保険の保険金額は火災保険の半額までと決まっていて、制度的に補償される金額が今いち保険の意味をなしていないと考えている人もいるようです。

それでも、地震が原因の火災は地震保険でないと補償されないということもありますので、やはり地震保険には加入をした方がいいのではないでしょうか。


〇耐震診断・補強工事への支援



自治体によっても異なりますが、国や県、各市町村では相談窓口を設けて耐震診断から改修までの支援を行っています。

東京都
http://www.taishin.metro.tokyo.jp/josei/
神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f535202/p1061714.html

例えば、目黒区では木造住宅の耐震改修工事の場合、費用の80パーセント以内で、上限120万円を助成してくれます。


〇賃借人が家賃を払ってくれて賃貸経営は成立つ



賃貸住宅オーナーには入居者の生命を守れる安全な住まいを提供する義務があります。

地震で建物が倒壊した場合でも当該建物が建築基準法の耐震基準を満たしていれば入居者の損害に対する賠償責任はないとされています。

ただし、建物の修繕状況が悪かったり、違反建築が原因で耐震上の問題があった場合には
損害賠償責任が発生する可能性があります。

融資を利用している場合、地震で建物が倒壊してもローンは残ります。
建物が倒壊(半壊でも家賃をもらうことができない)してしまえば収入がなくなるのですから経営は破綻します。

オーナー側の経営の側面から考えても耐震補強や地震保険の加入は必要ではないでしょうか。



2017年3月9日木曜日

カリスマ大家さんの不動産投資塾

不動産投資を始めるきっかけには不動産投資の本やセミナー、インターネット広告などいろいろな媒体があります。

本の著者やセミナーの講師は不動産会社の社員だったり有名な投資家だったりします。

不動産投資家の中には不動産コンサルタントと称して個人コンサルをしている人もいます。

不動産投資で成功した人が成功のノウハウを教えてくれるという触れ込みですが、不動産の専門家から見ると危いところを感じてしまうことがたくさんあります。

今回はカリスマ大家さんが主催している不動産投資塾の注意点についてお話しします。



〇大家さんの不動産投資塾とは?


大家さんが主宰する不動産投資塾に在籍する不動産コンサルタントの多くは不動産投資で成功してサラリーマンを退職した人たちです。

その後、専業大家として悠悠自適な生活を送っているとプロフィールに書いてあります。

そんな生活を送っていながら不動産コンサルタントとして、これから投資をする人に投資のノウハウを教えてくれるありがたい仕事をしてくれます。

新米の投資家さんが不動産会社にだまされるのが見ていられないというコンサルタントがセミナーやコンサルティングで不動産投資を教えてくれます。


〇不動産コンサルタントと不動産会社はどう違う?



不動産会社は不動産の仲介業務や転売、分譲で利益を得ています。
宅建業法という法律で規制を受け、営業のためには免許が必要です。

違法な行為や不適切な業務があると監督官庁から指導を受け、免許が取り消される可能性があります。

不動産コンサルタントは誰でも始めることができます。
特に免許や資格は必要ありません。

ちなみに少し紛らわしい資格に「不動産コンサルティングマスター」というのがあります。
不動産コンサルティングマスターは不動産コンサルティング技能試験に合格し、宅地建物取引士・不動産鑑定士・一級建築士の実務経験が5年以上なければ登録をできないのでそれなりにちゃんとした資格です。

不動産コンサルタントの収入源はセミナー講師報酬、不動産会社からの顧客紹介料(仲介手数料のキックバック)などがあります。

セミナーだけでなく個人向けのコンサルをしているコンサルタントの人もいます。
だいたい1時間の面談で数万円か月に数万円から十数万円で不動産投資の先生をしてくれます。

主催セミナーなどに参加すると、セミナー終了後に飲みに連れていってくれるので不動産投資をする友達を作ることができます。

ちなみに執筆業の多くはブランディングのための自費出版なのであまり利益にはなりません。


〇不動産コンサルタントが不動産会社を経営



不動産コンサルタントにも不動産会社を経営している人がいます。
カリスマ大家さんのコンサルタントを売りにしているため、表向きは不動産会社を経営していることを隠している場合もあります。

コンサルで紹介してくれる物件は自社の物件だったり、レインズに掲載されている物件だったりします。

紹介料をもらうよりも仲介手数料をもらったほうが効率が良いと気づいたのだと思います。


〇不動産会社から見る不動産コンサルタントの危うさ



世の中の全ての不動産コンサルタントが悪いとは思いません。
不動産投資の基本を教える、購入後は運営をサポートする「個別指導塾」のような立場なら価値があると思います。

対不動産会社では「だまされてはいけない」というフィルターをかけて慎重に話を聞くのに比べて、自らが投資に成功した有名投資家コンサルタントの言うことは素直に聞いてしまいがちです。

しかし、物件を紹介して成約時に紹介料をもらうなら、彼らがだまされてはいけないと
注意喚起している不動産会社と同じ側の人ということになります。


有名な投資家で成功した人から紹介を受けている、高額なコンサルティング費用を払っているからなどの理由で、この物件は大丈夫と判断をして物件を購入した人が管理や追加投資の相談にきて失敗に気付くケースを何度も見ています。


特に自己資金ゼロで資産規模〇億円になれるなどと宣伝をしているコンサルタントは過去に紹介したこの記事と同じようなことをしているように思えます。

参照:「頭金ゼロでサラリーマン大家」を借金漬けにする地方銀行のウラの顔 

このタイプのコンサルタントはリーマンショック後など不動産の安い時期に自分の属性をうまく利用して融資を受けて物件を購入しています。

良いタイミングで投資をした結果、再現が難しい投資手法で成功したため、自分の投資と同じ手法を勧めても今の時代には再現できず、結果として依頼者が失敗してしまうのだろうと思います。


○投資は自己責任だという事



コンサルタントから紹介された物件を購入をしても不動産会社から物件を購入しても最終的には「投資は自己責任」ということになります。

どんな有名人に相談していても失敗の責任は取ってくれないのです。

不動産投資をする人は不動産賃貸業という事業の経営者になります。

不動産コンサルタントに相談するのもいいですが、「投資は自己責任である」という事を忘れずに自分の知識ですべてを判断・運営できるようにするための努力を欠いてはいけないように思います。


2017年2月28日火曜日

3月上旬国会提出予定「民泊新法」で民泊はどうなる?

3月上旬に住宅宿泊事業法(仮称、以下「民泊新法」)の提出が予定されています。

民泊新法は決められるのは
・民泊の運営を開始する方法に関する規定と営業可能な地域
・年間営業日数
・民泊運営者に課される義務
・民泊仲介業者への義務
などが予定されています。

民泊というのは自宅の一部や、空き家、マンションの空室などを活用して宿泊サービスを提供することです。

民泊は現状、実態が先行してグレーな部分で行われています。
新しい法律ができればそれに対応して規制が行われ違法な民泊は摘発される可能性があります。

今後、民泊を行うためには、民泊新法に基づく3つの合法民泊のどれかに該当しなければなりません。


 

①旅館業法に基づく簡易宿泊所


旅館業法に該当するかの判断は
・宿泊料の有無
・社会性の有無(広く一般に募集をしているか)
・反復継続性の有無
・生活の本拠か否か(旅行者か居住者か)
この4点で判断します。

世の中で行われている民泊は
・宿泊料をもらう
・ネットなどで募集している(社会性あり)
・反復継続している
・旅行者が利用する
ことから旅館業法に該当する可能性が高いです。

そのため今のまま営業を行うと違法民泊となり旅館業法違反となります。
旅館業法違反の罰則は6か月以下の懲役または3万円以下の罰金となります。

簡易宿泊所として営業を行うためには都道府県知事の許可が必要になります。
簡易宿泊所は宿泊人数が10人以下の場合には一人当たり3.3㎡以上の面積があることが条件です。

建築基準法や消防法など関係法令にも適合させる必要があり、衛生基準に従って運営されているかどうか立入検査があるなど条件は厳しくなります。

行政区によってはフロントの設置を義務づけているところもあり、ワンルームマンションなどでは簡易宿泊所民泊を行うことは困難な場合があります。

②特区民泊


国が定めた特区内では旅館業法の適要除外となります。
現在の特区の対象地域は大田区、大阪府、大阪市、北九州市です。

~大田区の場合~
羽田空港のある大田区は東京都で唯一、民泊条例を作り特区民泊に取り組んでいます。
http://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/kokkasenryakutokku/ota_tokkuminpaku.files/tokkuminpaku_annai.pdf

○主な認定要件
・一居室の床面積が 25㎡以上で施錠可能であること
・台所、浴室、便所・洗面設備があること
・寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理・清掃に必要な器具などがあること
・外国語を用いた案内があること
・滞在期間が6泊7日以上であること
・建築基準法上「ホテル・旅館」が建築可能な用途地域であること

他には消防への事前相談や近隣住民への周知などの条件をクリアすると区から認定され民泊事業を行うことができます。

③新法民泊

新法によって以下の規制ができる予定となっています。

1.民泊の運営を開始する方法に関する規定と営業可能な地域

旅館業法の許可制よりも簡易な届出制が導入
住宅専用地域での営業が可能となる。

2.年間営業日数

180日以内(日数や時期は条例で制限できるようにする方針)

3.民泊運営者に課される義務

●家主居住型(ホームステイ型)
家主に宿泊者名簿の作成、ゴミ処理など最低限の衛生管理、周辺住民とトラブルになった場合の対応が義務づけられます。

●家主不在型
国土交通省に登録した管理業者への委託が義務づけられます。
利用者名簿の作成や衛生管理、騒音・ゴミ出し等の近隣トラブルや苦情の申し入れ先として管理業者への委託を義務づけます。

どちらの類型でも管理規約や賃貸借契約に違反していないか確認されます。

4.民泊仲介業者への義務

民泊仲介業者は登録制となります。
取引条件の説明、民泊であることをホームページに記載、行政当局への情報提供が義務化されます。


〇現在、民泊を行っている人は注意


現在行われている民泊の多くは違法状態の可能性が高いです。
合法的な民泊に移行するために今のまま営業を続けると違法な民泊は摘発される可能性があります。

政府は無許可営業の民泊、いわゆる「闇民泊」への罰金額の上限を現行の3万円から100万円へと引き上げる方針を示しています。

家主(民泊ホスト)にも罰則を貸す意向であることが報道されていますので許可を取得するか民泊からの撤退を考える必要があります。

〇不動産オーナーとして民泊トラブルに巻き込まれないように


賃貸契約書に使用目的の規定や転貸借の禁止規定をいれて自分の物件で違法な民泊が行われないようにしましょう。



2017年2月20日月曜日

仲介手数料無料の仕組み

投資用でも実需でも不動産を購入する時には物件価格以外に税金などの諸経費がかかります。
諸経費の中の1/3くらいは不動産会社に払う仲介手数料です。

仲介手数料の上限は国土交通省の告示で決まっています。
400万円以上の物件なら3%+6万円(別途消費税)です。

不動産仲介の場合には成功報酬となっていて多くの会社が購入相談を何時間しても、何回不動産会社の車で物件を見に行っても、物件の紹介だけを何年受けても成約をしない限りお金は取りません。

最近はインターネットの広告が充実していて物件情報をたくさん見ることができるので3%+6万円の仲介手数料は法外に高いなんて話もよく聞きます。

その流れからか仲介手数料無料を売りにする不動産会社が増えています。

仲介手数料を無料にしてしまうと成功報酬で運営されている不動産会社は収入源がありません。

今回は不動産会社が仲介手数料を無料にしている仕組みを説明します。


〇両手仲介と片手仲介



不動産会社は物件の売主と物件の買主から仲介手数料をもらうことができます。
売主買主双方の仲介を1社で行うことを両手仲介といいます。
売主買主どちらか一方の仲介を行うことを片手仲介といいます。

両手仲介については高く売りたい売主と安く買いたい買主との双方のエージェントとなることが利益相反であるという指摘がありますが、日本の不動産取引では禁止されていません。
※現実には両手仲介の場合にはやや売主よりのスタンスになることが多いように感じます。

数年前に週刊ダイヤモンドで物件の囲い込み行為についての記事が掲載されたときには、大手不動産仲介会社の平均手数料率は4.5%~5%超という資料がでていました。

ほとんどの取引が両手仲介で行われているという指摘のようです。
大手不動産仲介会社に勤務した経験から現実には4~4.5%くらいではないかと思います。
※当時は当たり前のように囲い込みが行われていました。

個人的には顧客側が両手仲介だということを知ったうえで取引をすれば両手仲介=悪ではないと思います。
もちろん囲い込み行為がないということが大前提です。


〇仲介手数料無料だと物件の選択肢が減る



仲介手数料無料を掲げている不動産会社の多くは売主、買主どちらか片方から仲介手数料をもらって片方を無料にしています。

両手仲介の手数料の片方を無料にしているのです。
この取引をするためには両手仲介であることが絶対条件です。

買主の手数料を無料にするなら売主から手数料をもらえる物件だけ紹介します。
世の中にはたくさんの物件が売りに出ていますが売主から手数料をもらえる物件はかなり少ないのが現状です。

そのため買主は物件の選択肢が大幅に減ることになります。

売主の手数料を無料にするならその物件の買主はその会社直接の顧客でなければならなくなります。(買主が手数料を払う)
囲い込みと同じ状態になるので取引機会は著しく少なくなります。


〇仲介会社が売主の関連会社で仲介手数料分が販売物件の利益に含まれている場合も



仲介会社が売主の関連企業というケースもあります。
その場合には手数料を無料にしてくれるかもしれませんが、仲介手数料分は販売物件の利益に含まれています。

売主の関連企業であっても関連が分からないような社名にして仲介手数料を取っている会社もたくさんあります。


〇仲介手数料無料を優先するかはその人の価値観



どうしても不動産仲介会社に払う価値がないと思う人、選択肢が減っても節約をしたい人は仲介手数料無料の会社を選んでもいいと思います。

ただし、仲介手数料を払わないということはサービスの対価を払わないのですから、相応の対応をされても我慢してください。


ちなみに収益物件を取得した場合の仲介手数料は減価償却の対象となります。
仲介手数料を土地建物の取得価額に按分して建物分が減価償却の対象となって経費に算入してできます。

全体から見れば大きな金額ではないかもしれませんが、せっかく払ったのなら申告して経費に算入しましょう。



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