2016年5月24日火曜日

120年ぶりの大改正 民法改正の不動産賃貸業への影響は? #2

前回に続いて民法改正の不動産賃貸業への影響についての話です。

今回は敷金に関する改正について説明します。


〇民法改正 敷金の改正点



現行民法では「敷金」に関する規定がありませんでした。
何をもって「敷金」というのか、いつ返還すればいいのか、敷金と不払い賃料の取扱いなどは民法の解釈と判例で解決されてきました。

改正民法では敷金の明文規定を作っています。

①敷金は名目の如何を問わない


敷金だろうが保証金だろうが名目は問わず賃借人から賃貸人に交付する金銭で、賃貸借契約に基づく賃借人の金銭債務を担保する目的であるものは全て「敷金」と定義されます。

②返還時期


「賃貸物の返還を受けた時」、「賃借権を適法に譲渡した時」とされています。
敷金の返還と賃貸物の返還は同時履行ではありません。
返還された建物を見ないと敷金の清算はできませんので当然です。

賃借権が譲渡された場合には旧賃借人に敷金を返還して新賃借人から敷金を預かります。
旧賃借人と新賃借人との間で敷金返還請求権の債権譲渡がされていれば旧賃借人への返還は不要です。

③賃借人は未払い賃料について敷金から充当せよと主張できない。


賃貸人は未払い賃料を敷金から充当できますが、賃借人からは請求できません。
実務上は当然のように行われていましたが、明文化されました。


④原状回復の規定を明文化


現行民法には賃貸借契約が終了したときに賃借人が原状回復義務を負うという直接の条文はありません。

民法598条(借主による収去)を賃貸借に準用していましたが、原状回復の内容が明確とは言えず多くのトラブルを生みだしていました。


改正民法では賃借人が賃貸借契約終了時に原状回復義務を負うことが明文化され、あわせて賃借人は通常損耗については原状回復義務を負わないことが明文化されました。

通常損耗とは普通に生活していれば生じてしまう汚れや劣化のことです。
これは現在の原状回復ガイドラインと同じ内容です。

現在の運用と同様にハウスクリーニング費用や通常損耗について賃借人が負担する特約をすることは可能です。

そのためには賃借人が負う原状回復義務の範囲を契約書に明記することが必要となります。

自主管理の不動産オーナーや昔からある地場の不動産業者はガイドラインについてあまり理解していない人が多くいます。
今まで当たり前のように賃借人に請求していたものが自己負担になる可能性があります。

実務では敷金は返還することが当然となりつつありますので民法改正と合わせて原状回復ガイドラインを再度見直すことも必要だと思います。


2016年5月17日火曜日

120年ぶりの大改正 民法改正の不動産賃貸業への影響は?

最近は賃貸契約時に連帯保証人ではなく保証会社を利用することが多くなりました。
当社では契約更新の際に連帯保証人の方にも更新後も引き続き連帯保証人となっていただけるか確認します。

そのため更新時に連帯保証人から保証会社利用へ切り替えを行うケースも増えています。

連帯保証人については国会で審議中の民法改正で今までとは違う運用が必要になる可能性があります。

今回は民法改正の不動産賃貸業への影響を説明します。


民法の改正案が平成27年の通常国会に提案されました。
しかし、国会が安保法制の審議の影響を受けて、改正民法案は平成28年の通常国会に審議を持ち越されました。

改正民法案は、現在の民法中債権関連の条項を改正の対象としています。


〇連帯保証人についての改正



賃貸借契約の連帯保証契約でこれまでと大きく変わりそうな点は「極度額を書面で定めなければ無効」になるということです。

これはどういうことかと言うと滞納賃料は○月分、翌月分、翌々月分と増えていきます。
改正民法では増えていく滞納賃料を保証する額の上限を決めて書面で合意しなければ保証契約は無効とすると定めています。(保証人が個人の場合)

極度額があまりに高額になると連帯保証人のなり手がいなくなる恐れがあり、高額すぎる場合には極度額の設定が認められない場合も考えられます。

この極度額の規定が適用となるのは改正民法施行後に新たに締結する契約となります。


〇事業系賃貸借契約における賃借人の個人連帯保証人への情報提供義務



オフィスや店舗などの賃貸借契約の場合に賃借人は個人の連帯保証人に対して下記の情報を提供する義務を負います。

①賃借人の財産及び収支の状況
②主たる債務以外に負担している債務の有無ならびにその額及び履行状況
③主たる債務の担保として他に提供し、または提供しようとするものがあるときはその旨及び内容

保証を履行する可能性が出てきたときには情報を提供して下さい。ということです。

この条項がオーナーにとって危険なのは賃借人が情報提供の義務を怠った場合、オーナーがそれを知っていたり知ることができる状況であった場合には保証人は保証契約を取り消すことができる点です。

義務に違反したのは賃借人でもオーナーに影響することになります。

家賃を滞納されたり経営状況が良くないと思われる時にはオーナーは賃借人が情報提供をしているか確認することが必要となります。

他の改正点として「敷金について」の項目がありますので、それは後日配信したいと思います。



2016年5月2日月曜日

アパート経営の必要経費と税務上の取扱い 物件保有期間

前回は収益物件を購入したときにかかる諸費用の税務上の扱いについてお話ししました。

今回は収益物件保有中にかかる経費の税務上の取扱いについてお話しします。


〇アパート経営の経費として計上できるもの



・借入金利子  
経費になるのは利子部分のみで元金は経費にはなりません。

・減価償却費   
建物・設備の減価償却分を毎年、必要経費として計上します。

・租税公課   
固定資産税・事業税。所得税・住民税は経費にはなりません。

・修繕費      
建物や設備の修理代金、入居者の入れ替え時などに発生するメンテナンス費用。

・損害保険料  
火災保険、地震保険などの掛け金で当年分。

・委託管理費  
不動産会社へ支払う管理費、マンションの管理会社へ支払う管理費・修繕積立金。

・手数料      
不動産会社への仲介手数料。

・水道光熱費  
共用部分の水道光熱費。

・立ち退き料  
老朽アパートの建て替えで発生した立ち退き料や建物の取り壊し費用。

・入居者募集のための広告宣伝費

・その他      
ローン借り換えに要する諸費用、税理士報酬、弁護士報酬、通信費、消耗品費など



通信費や消耗品費は賃貸経営にかかわる部分のみ対象です。
物件を見に行くための交通費も経費として計上できます。
車を買って減価償却をする人もいるようですが、
物件を見に行くための分だけが償却可能です。


〇青色申告を選択するとさまざまな優遇措置がある。



申告上の大きな違いは、白色申告の場合は所得が300万円以下の場合、記帳の義務がありませんが、青色申告には全ての場合に記帳の義務があり、一定の帳簿を備える必要があるということです。

面倒になる分、青色申告には節税のための優遇措置があります。
事業的規模を満たしていれば、そのメリットは大きく広がります。
事業的規模とは5棟または10室の経営規模です。

優遇措置は下記の3点です。

①複式簿記の採用で65万円の特別控除が必要経費に計上できる(事業的規模の場合) 
 ※事業的規模でない場合には10万円。
②専従者給与、青色専従者給与として、全額必要経費に計上できる(事業的規模の場合) 
 ※白色申告の場合は、配偶者は86万円、その他の親族は一人につき50万円。
③損失の繰越  発生した損失を3年間繰り越すことができる。


私のお客様がある不動産業者に言われたそうですがオーバーローンのためには青色申告をしてはいけないそうです。

虚偽申告で融資を受けていると帳簿があるとつじつまがあわないという理由です。

不動産投資とは不動産賃貸業を経営することです。
一人の経営者として、そのような話には乗らずに正しく納税・節税をしてほしいと願います。


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